フロー体験とは2
前回の続きです。
何かに没頭し、なおかつ統制感や心地よさ、さらには成長実感が得られる状態を「フロー」といいます。
私も時に、時間を忘れて没頭する仕事があります。時計の針を見るたびに1時間進んでいく感覚。そして疲れなどなく心地よいのです。小学校の教員であれば、年度はじめの準備に追われる4月の頭を思い浮かべるとわかりやすいと思います。疲れるし大変だけど、ワクワクが勝るあの感覚です。
ただ、テレビゲームなど、プライベートの遊びでは「時間を忘れる」ことはあっても、仕事ではなかなか、、、という方が大半なのではないでしょうか。
今回は、チクセントミハイの研究を元にフローをもう少し考えていきます。
フロー状態を「チャレンジ」と「スキル」から見分けると
こちらの図を再掲します。
左右の軸はスキルの高低を示します。
上下の軸はチャレンジレベルを示します。
フローは右上に位置し、自身のスキルレベルも高く、チャレンジレベルも高い状態で現れます。
真逆は何かというと、自身のスキルが低く、チャレンジレベルも引く「Apathy=無気力」な状態のことです。
また、スキルが低いのに高いチャレンジ環境に身をおくことは、左上「Anxiety=不安」(仕事のストレス)となります。
ここで、スキルレベルが中程度で高チャレンジな状態は「Arousal=覚醒」の状態です。
言い換えると「一皮剥ける瞬間」でしょうか。何もスキルが高くなってから挑戦しようと構えなくても、ある程度のスキルを身につけたらチャレンジする環境に身を投じてみることで「覚醒」し、さらなるスキルを身につける契機となり、「フロー」に近づいていくと考えられます。
手前味噌ですが、18年間の教員生活でスキルは高まった一方で、チャレンジ環境は中程度だったかつての自分は、「Contorol=コントロール」(慣れ親しんだ仕事業務)をする状態だったのだなと思います。
起業してからはスキルはググッと低くなり、時に仕事への不安を感じることもありますが、チャレンジ環境に身を置いていることは確かですから、時に覚醒することもあります。そう考えると、ありがたい環境で働かせてもらっているなと、周囲に感謝です。
スキルとはなんだ
チクセントミハイは、ここでいう「スキル」とは、仕事におけるテクニックや知識のとどまらず、広い意味での個人の特性・価値観であると言っています。
たとえば、仕事に対して楽観的な姿勢であったり、「自分ならできる」という自己効力感なども「スキル」なのです。
ただただ、経験値を積むことが「スキル」ではないとすると、普段の生活やコミュニケーションから「スキル」を蓄積することもできます。
また、人のいいところを真似する、いい人と一緒にいる、というのも「スキル」を身につける術になるとも考えます。
自分1人で楽観的になったり前向きになったりというのは限界があるように感じますが、常に励ましてくれる仲間、先輩。尊敬する仕事仲間の振る舞い。大切な家族との時間なども、「自己効力感」「楽観性」「希望」「レジリエンス」といった個人の資源を蓄える機会になります。
普段の心がけから「スキル」というのは高まると考えると、やれることっていっぱいありますよね。
フローを生み出すのはどこなんだ
前述したとおり、趣味とか嗜好品とか、仕事以外のことで没頭する時間はあるのになあ、と思う人も多いと思います。
これに関してチクセントミハイはある調査を持って
人が高いチャレンジと高いスキルの状況にいて、集中し、創造的であり、満足してる瞬間は、家にいるときよりも職場で仕事しているときに、より頻繁に報告された
チクセントミハイ (2020)
と述べています。
なのに我々があまり、仕事の場においてフローを感じられないのは、
”仕事にやりがいを感じてなかったり、真の幸福を仕事以外に求めていたりするから” 大野(2015)
のようです。
実はプライベートよりも職場の方がフローになれる状況にあるのに、我々がその環境をうまく統制できていないのです。
チクセントミハイの大学における授業では、日常の最も面白くない活動を選び、できるだけフローに近づけるように創意工夫を凝らさせるようです。
単純でつまらない仕事も、細心の注意を払って取り組めばスキルを向上させる機会はいくつも見つかり、楽しみを見出すことができる
Csikzentmihalyi,2004
といっているように、「ジョブ・クラフティング」にもつながる考えが、フローに近づけるんですね。
おっと、また新しい言葉が出てきました。
いい機会なので、次は「ジョブ・クラフティング」について考えていきましょう
ほいじゃあ (広島弁で「それではまた」の意)
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