文献紹介「心の健康問題を抱える労働者をめぐる現状(倉知,2022)」

メンタルヘルス不調の企業調査を元にした考察です。

調査では、メンタル不調の多くが気分障害の方で占めていたようです。

採用前後の支援として、1次予防、復職支援、環境整備の点で大事なポイントが述べられています。

以下、気になったポイントの抜粋です。

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・企業等が行うメンタルヘルス対策の現状

・メンタルヘルス対策の3つ。

 ①メンタル不調の予防

 ②採用後にメンタル不調となった労働者への支援

 ③職業生活に向けた相談支援や職場環境整備

①メンタル不調の予防(下図参照)

②採用後にメンタルヘルス不調となった労働者への支援の現状

・26−30万人がメンタル不調による長期休業。

・復職後も不調になるケース_回復が不十分なまま復職、または、回復しても再発防止のための対処法を学習せず復職。

・職場環境整備(職務内容、勤務時間などの心身の負担軽減)が改善されないまま同じ職場環境にも踊ることで再発する。

・事業所内の人事労務担当者と産業保健スタッフ(職場環境整備と復職できる状況かどうかの判断)と,事業所外の医療機関(症状の回復),復職支援機関(再発防止対処法の獲得,復職準備性の 確立)の連携協力が必要 

○厚生労働省「心の健康問題に より休業した労働者の職場復帰支援の手引き」 

・STEP1(病気休業開始及び休業中のケア)

▷労働者からの休業についての診断書提出

▷労働者が療養に専念できるよう,休業期間の制度の説明 など 

・STEP2(主治医による職場復帰可能の判断) 

▷労働者からの職場復帰の意思表示 

▷労働者からの職場復帰可能の診断書の提出

▷産業医等産業保健スタッフによる精査

▷主治医への情報提供 など 

・STEP3(職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成) 

▷労働者の復帰意思確認 

▷産業医による診断

▷情報の収集と評価

▷職場復帰支援プランの作成 など 

STEP4(最終的な職場復帰の決定) 

▷就業上の措置等による産業医の意見書の作成

▷事業所による最終的な職場復帰の決定 など 職場復帰 

STEP5(職場復帰後のフォローアップ) 

▷復帰後の健康状態の確認 勤務状況及び業務遂行能力の評価

▷職場復帰支援プランの評価と見直し

▷職場環境改善

▷管理監督者,同僚への配慮 など 

③精神障害者として雇用した労働者の支援

・企業には、障害者の雇用の促進等に関する法律の基本理念や事業主の責務に基づき、経済社会を構成する労働者の一員として能力を発揮する機会を与えること、社会連帯の理念に基づいて有為な職業人として自立しようとする努力に協力する責務が課されている。

・精神障害者として雇用した労働者には,メンタ ルヘルス不調予防の取り組みだけでなく,採用後にメンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰後のフォローアップと同様の支援が必要 

・就労支援専門機関は事業所に対しても専門的見地からさまざまなサポートをしてくれるので,心強い専門家 

・精神障害者である労働者とのかかわり方に戸惑っ ていること,職場環境整備に向けた取り組みが不 十分であることなど事業所側の課題 

・精神障害者の職場環境整備には,施設設備などハード面の整備は求められていない

・対人関係などソフト面の整備が求められる。そのためには,経済的支援施策よりも人的支援施策が必要 

○所感

精神疾患の方の環境整備には、設備面などのハード面ではなく、対人関係などのソフト面が求められる。という、最後の一文はとても大事です。

クールダウンできる場所など、人と距離を置いて気持ちを落ち着かせられる環境(ハード面)も必要でしょうが、人との関わりに困難さを抱える方もいらっしゃるので、どういう支援であればコミュニケーションが楽になるのかという視点(ソフト面)が必要と感じました。

これには、周囲の方々の理解や関わりが不可欠であり、「相互扶助」が求められると考えます。

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