3回に分けてお伝えしているジョブ・クラフティングですが、今回はまずこちらのデータをご覧いただきます。
これは22年卒の就活生に「会社選びで重視すること」を問うた結果(n=386)です。
1位は「社風が合うこと」です。
意外にも「給料が高い」は7%です。
それより上は「働きがい」であったり「やりたい仕事ができる」であったり。自身の「自己成長」と「会社の成長」がマッチしているかどうかを基準としています。
若い人の感覚というものは、とかく「同じ属性」つまりは、これから就職をする後輩たちが参考にしがちです。
「ああ、先輩たちってこういった思いで会社を選んでいるのか〜、じゃあ僕も」という感じで。
しかし、経営者層こそが知るべき内容ではないでしょうか。
「我が社の社風に会う人が来ればいい」と構えていては、「社風」そのものの改善にはつながりません。
ワーク・エンゲージメントにつながる大切な「組織風土」を変革することの大切さを物語っています。
何が言いたいかというと、若い世代では顕著である「内的な充実」が時代の潮流ということではないでしょうか。
そしてここに見る「自分のやりたい仕事ができること」というのが、ジョブ・クラフティングによって開発可能というです。
ジョブ・クラフティングの下準備
とはいえ、若い人や組織に入りたての人が、全て自分のやりたい仕事に関われることは少ないでしょう。
ほとんどが「こんなはずじゃなかった」というギャップに苦しむはずです。
少し個人的な話をすると、大学院を出て教育学修士号を取得し、教育については人より多く学んだはずの私が現場で最初にやった仕事が「畑仕事」でした。
新年度、子供たちが理科や総合の授業で用いる畑を整備したのです。1日中畑をいじる。なかなかの衝撃でしたw
また、教員10年目で異動した「特別支援学校」の最初の仕事は、「トイレ介助」でした。障害をもつ子供たちの排泄の支援です。トイレに一緒についていくだけではなく、時に(というか毎回)オムツの交換や排泄後の処理(お尻を拭く、汚れた下着を交換するなど)をしていました。手に排泄物が付くことも常。
これは当初なかなかに受け入れ難い仕事でした。むしろ「こんなことするために長年教員やってきたわけじゃない」と心の中で反発していました。
しかし、トイレ介助も子供たちにとってはすごく大切な「教育の場」と知るようになり、心が変化しました。
無事に排泄ができた!トイレトレーニングが成功した!といった場面では、我が子が初めてトイレで排泄できた喜びと同じような感覚になっていきました。
「トイレ介助」は「子供たちの成長を確認する場面」だ。「子供たちの成長」を支えるのが教育だから、これは立派な「教員の仕事」だ!と捉えるようになり、嘘のように「全く」抵抗感がなくなりました。
これも私がしたジョブ・クラフティングだったなと、今になると思います。
新しい仕事、はじめて出会う業務に対しても「自分のやりたい仕事」を見出すことが可能なのがジョブ・クラフティングだと理解しています。
下準備の3要素
具体的なジョブ・クラフティングの方法に入る前に「下準備」の必要性を「ジョブ・クラフティング入門」川上ら(2021)には書かれています。
それが
- 自己規制を解除する
- チャレンジ精神を尊ぶ
- 変化の余地をみつける
ということだそうです。
まず1つ目の「自己規制の解除」についてです。
我々の社会、特に日本においては、「人と違うことをする」ことを嫌う社会でもあります。
「出る杭は打たれる」という言葉が象徴的です。私みたいな変わった教員は、これまで何度も打たれてきたことは想像に容易いでしょうw
打たれすぎて頭がぺこぺこになるくらい、教員人生18年では本当に何度も何度も打たれてきました。
一方で、いまだに卒業生たちが家に「結婚しました!」「就職しました!」と報告に来てくれたり、中途障害で人生に楽しみを見いだせなかったある生徒が卒業間際に「先生のおかげで、学校が楽しかった」と言ってくれたりもしました。
自分の教員としての価値を自慢する訳では全くないのですが、教員たちの中にある「一定の空気」に馴染めなかった私のやり方にも、面白味や親しみを感じてくれる子供たちがいてくれたということは、いかに「出る杭が全て悪」ということではないことの表れだと感じています。と、自己弁護はこれくらいにしますw
ここで言いたいのは、周りに同調しないと!!という自己規制が強くなりすぎると、そこに「創意工夫は生まれない」ということです。
まずは「自己規制を解除」しなさいということを、川上らは述べています。
2つ目の「チャレンジ精神を尊ぶ」についてです。
これは本人にもそうですし、チャレンジを見守るリーダー層にもあてはまることです。
言い換えると「失敗をおそれるな」ということでしょうか。
失敗におそれることは人間の正常な心の働きでしょうが、失敗をおそれて行動を起こさないところに「変化」は決して訪れないということです。
3つ目の「変化の余地をみつける」です。
新しい課題や仕事に柔軟に対応し、変化成長をしていくことを自覚する必要性を川上らは唱えています。
固定的な視点で物事や仕事を見るのではなく、「どこかに変化の余地はあるはずだ」と柔軟に見ることです。
私がよく、教員時代に後輩たちに言っていた言葉が「前提を疑え」でした。
目の前の仕事がルーチンになった瞬間に、「思い」が失われる。
他の先生たちがやっているから、僕もやると思考停止するのはなく、何のための誰のための日々の仕事なのかを考えて、腹落ちさせろと伝えていました。
「柔軟に見る」と同義ではないかと考えます。
さて、次回は下準備ができたということで、ジョブ・クラフティングの3つの方法について見ていきます。(ひっぱるな〜w)
ほいじゃあ
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