「合理的配慮」の本質とは?合意形成学から考える/文献調べ 24−34

(本記事は2024年12月5日に更新されました)

「reasonable accommodation」の和訳が「合理的配慮」とされる際に、多くの専門家が異議を唱えた経緯があります。

弊社も、研修やセミナーにお声かけいただく中で、本質的な意味はどこにあるのかを探っているところです。そんな中で、「合意形成学(勁草書房,2011 著:猪原健弘)」にコンセンサスとアコモデーションの比較をした章があり、「accommodation」の意味を考えるには非常にわかりやすいので、抜書きさせてもらいつつ、考察します。

目次

コンセンサスとアコモデーション

合意形成のプロセスには、2つのアプローチがあります。「コンセンサス」と「アコモデーション」です。
それぞれの特徴を整理します。

コンセンサス

・議論などを通じて関係者の根底にある多様な価値を顕在化させる
・相互の意見の一致を図る過程
・コンセンサス・ビルディングと理解されることが多い(Susskind and Cruikshank,2006)

アコモデーション

・意見の一致というよりむしろ、さまざまな価値観が共存・共生
・不安定の中で安定が達成されている状態
・さまざまな価値観が並立しながらそれぞれが他を受け入れている状況を、アコモデーション(accommodation)と呼ぶ(Checkland,1999;出口・木嶋,2009;木嶋,.1996.2000.2005)
結論・結果が移転に収束しているという意味でのコンセンサス達成の状況とは異なる

補足として、「アコモデーション」は、漢語の求同存異(意見の一致点を求め、相違点は残す)、和而不同(和睦しながらも意見の違いに妥協しない)といった熟語は、これに近い考え方であります。

異なる見解を持つ人々が「ともにことに当たろう」とする状態の一部として取り込んでしまう状況を示しているようです。

「合理的配慮」を考えるヒント

「配慮」という言葉には、「コンセンサス」のように意見の一致を目指すのではなく、多様な価値観をそのまま受け入れる「求同存異」の精神が含まれています。
これらはDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の概念に近い(もしくは同義)です。

一方で、現場において、特にマネジメントの立場においては、多様性を受け入れるだけでは不十分であり、「配慮はしても遠慮はしない」というビジネスパーソンとしての役割を与える(自覚する)ことが大切です。

所感

「合意形成学」から「accommodation」の意味を見てきましたが、言葉そのものに「DE&I」の概念が内包されているように感じます。

求同存異(意見の一致点を求め、相違点は残す)、和而不同(和睦しながらも意見の違いに妥協しない)といった熟語は、これに近い考え方

とありますが、「相違点は残し、意見の違いに妥協しない」という意味では、本来的なD&I(DE&I)と同じ意図を感じます。

「reasonable accommodation」とは、組織内において「適理的」に「求同存異」な状況を取り込むというものなのかなと、イメージできます。

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