ワーク・エンゲージメントとは(5)
「もっとポジティブに!」
「大丈夫!大丈夫だって!気楽に考えて!」
といった声かけを耳にしますが、みなさんはこういった言葉をかけられてどんな感情になるでしょうか。
今日はある論文を紹介しながら、こういった「前向き」な声かけが有効に働いて成果を上げる人と、逆に何の励ましにもならない人との2パターンがいることを紹介します。
最初に言っておくと、僕は後者のタイプですw
Noremらの研究(e.g.,Norem&Cantor,1986a,1986b;Norem&Illimgworth,1993)では
物事を悪い方に考えることで成功している適応的な悲観者
の存在を見出しています。
どう言うことかというと、将来の出来事に対して「ああ、心配だ」「ああなったらどうしよう」「こうなったらどうしよう」と悲観的になることで、良い結果をたぐり寄せているがいるということなのです。
これは実に意外でした。
ポジティブ思考、ポジティブ行動など、とにかく「ポジティブ」が善で「ネガティブ」は悪といった二極論を聴くことはあれど、「ネガティブもいいじゃん」なんて考え方は存在すらしないものだと思っていたからです。
Norem & Cantor(1986 a)は、過去のパフォーマンスへの認知と将来のパフォーマンスに対する期待によって、4つのタイプを見出しています。
A:過去のパフォーマンスに対して「自分ってやっぱすごい」とポジティブに捉えるタイプ
B:過去のパフォーマンスに対して「自分はダメだ」とネガティブに捉えるタイプ。
さらにAは、
将来のパフォーマンスに対して「次も大丈夫だ」とポジティブに考えるタイプと
将来のパフォーマンスに対して「次は失敗するかも」とネガティブに考えるタイプ
Bにも
将来のパフォーマンスに対して「次はきっと大丈夫だ」とポジティブに考えるタイプと
将来のパフォーマンスに対して「次も失敗だろう」とネガティブに考えるタイプ
という「4つの認知的方略」を考えたのです。
今回注目したいのが、Aにある2つのタイプです。
前者を「方略的楽観主義」
後者を「防衛的悲観主義」
とよんでいるようです。(Norem)
みなさんのイメージになる「楽観的な人」のタイプがこの「方略的楽観主義」でしょう。
過去に対しても、未来に対しても前向き。実際、そんな楽観的な人はあまり見たことがないのですが、世の中の風潮としてそれが善と思われている節があります。
そして、将来に対して不安を感じてネガティブに感じる「防衛的悲観主義」ですが、過去に対してはポジティブなのは特徴的です。
将来への不安の中でも「過去にできたからきっと大丈夫だ」という楽観主義的要素も少しは混じっているのでは?と考えます。
さて今回は、
・楽観主義、悲観主義ってのも4つのタイプがある
・その中でも将来のパフォーマンスをどう捉えるかの2つのタイプに注目
しました。
次回はこの「防衛的悲観主義」「方略的楽観主義」の2つについてもう少し掘り下げます。
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