ワーク・エンゲージメントとは(8)
新入社員がちょっとずつ業務に慣れつつあるこの頃。
育成担当者の悩みの一つに「後輩を叱れない問題」があります。
年次が近いケースはなおのこと。
教育現場には「叱り方の原則」が存在します。
参考になると幸いと思いつつ、3つのポイントを共有いたします。
「後輩を叱れない問題」の中には
「叱っていいのかどうか分からん曖昧ゾーン」が存在しています。
明らかなルール逸脱に対しては躊躇なく叱れるのですが、人によって捉え方が異なりそうな「モラル」「言動・行動レベル」には、なかなか口を出しづらいです。
僕も教員時代、幾度となく後輩指導(教育現場では「指導教官」という言い方をしていました)を任されましたが、1番難しいのが「言葉遣い」「話を聞く態度」「挨拶の仕方」といった、育成側の好みによって判断が分かれそうな問題を指摘することでした。
しかし、子供への指導と同じで、ここには原理原則がありました。
①叱るルールをあらかじめ伝えておく
出会いの時点で、組織の理念に沿った自分なりのポリシーやこだわりを伝えておきます。
そして
「君が組織に馴染んで成長してくために、僕なりに『これはおかしいな』という観点で注意することがあるので、予め伝えておくね」と、最初に握るのです。
最大でも3つほど、叱る観点を伝えます。
・言葉遣いが社会人としてふさわしくないとき
・お客さんや周囲に迷惑をかけたとき
・何度言っても改善がないとき
などです。
最初に握ることで「以前伝えた」という大義があり、叱るための心理的ハードルが下がります。
②話をさせる
「いやいや、もう7月下旬。そんなルールは作っとらんよ」という方がほとんどでしょう。
その際は、「話をさせる」ことを試してみてください。
叱るって、こちらが一方的に話すイメージが強いですが、相手に「話をさせる」のです。
叱りたい!!と思った際も、一旦自分の感情を傍に置きます。
その上で「ちょっと最近、君の行動で気になることがあるんじゃけど、何かわかる?」(広島弁じゃなくてもいいですw)
と、話を聞いてみてください。
本人は自分の行動や言動を振り返ります。
こちらが意図・想像してなかった事案も含めて、話してくれます。
「実は、、君も気づいていたようじゃけど(気づいてないようじゃけど)◯◯についてなんよ。なんでかわかる?」
と、また話をさせます。
叱るって一方的な行動のように思われますが、インタラクティブなやりとりにしてみると、意外とこちらの負荷は低くなりますし、相手の納得度とその後の行動変容の確度も高くなります。
③行為を叱り、人格は認める
よくやってしまうのは「あの時もこうだった」など、過去を掘り返したり、別の事案についても”ついで”に叱ってしまうことです。
また「みんな怒ってる」などと、あるのかないのか曖昧な他人の評価を引き合いに出すのもよくないです。
「この人、ただ単に傷つけたいだけじゃん」と思われると、1番みなさんが気にしている「関係性の崩壊」を招いてしまいます。
「あなたのことはとっても大切じゃし、大事に思っとるし、これからも期待しとるんじゃけど、言葉遣いが悪いとこは気になるんよ。そこで損して欲しくないんよ。直してくれたら、俺は嬉しい」
と、行為だけを咎めます。決して「ダメなやつ」みたいな人格に触れる言葉を吐いてはいけません。
そして、「これからの成長のために叱っている」ということを伝えることも大切です。
本来叱る目的は、相手を傷つけるのではなく、相手を成長させるためですから。
補足:意外に大事なのは、『2人きりの状態を作ること』です。衆人環視のもとで叱ると意地悪な育成担当者にとっては気味のいいことかもしれませんが、それはもう「叱る」ではありません。ハラスメントです。
2人きりの静かなスペースで、じっくり向き合うことが大切です。
ご参考にされてください。
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