ダイバーシティ・マネジメントの変遷から、障害者雇用に想いを馳せる/文献調べ25-04

「組織におけるダイバシティ・マネジメント」(谷口真美,2008) を参考に、ダイバーシティ・マネジメントの米国における歴史的変遷と、日本との比較について考察し、所感を述べさせてもらいます。
米国での人材多様性
米国においては、1960-70年代の雇用機会均等法のアファーマティブアクションの成立と拡充によって、マイノリティの積極的な採用や昇進が企業で行われるようになったとのことです。
その中には、アファーマティブアクションへの強い反発もあり、それらを乗り越えて企業に定着していきました。
その後、1980年代にはValuing Diversity(多様性を重視する)アプローチに変遷していき、これまでの「我慢して採用・登用」するのではなく「正しく評価する」ことに移行していったとのことです。
ダイバーシティマネジメントとアファーマティブアクションの違いとして、R.Thomasの分類を論文の中で挙げています。主には
アファーマティブアクション | ダイバーシティ・マネジメント |
従業員を留めておくことに焦点をあてる | 個々人の十分な潜在性の開発が自然に行われるような環境を作り出すことを優先 |
不利な状況におかれている個々人を救うことを目指している | 彼/彼女らの経営能力を強化できるよう支援するために機能 |
そして、ダイバーシティを理解する目的は、個々人が理解されるよう人々を助けることが必要とされ、協調的で生産的な職場を築くことであると述べられています。
日本での人材多様性
アファーマティブアクションは、日本では「ポジティブアクション」と呼ばれます。
1986年の雇用機会均等の議論と、1997年の男女雇用機会均等法の改正で、ポジティブアクションが規定されたそうです。
その後、2000年代になってダイバシティの議論が開始されます。
日本の課題
日本で「ダイバーシティ・マネジメントの段階に移行しにくい理由」を、谷口先生は2つ挙げられています。
1つは、企業が反発を生じるほどに活動を徹底していないこと。
2つは、組織のパラダイム変革の手段として、女性が組織に何をもたらすのかを説明しにくいから。
としています。
この論文書かれた2008年においての締めくくりとして
・戦略的な組織変革・ビジネス上の効果といった文脈ではあまり捉えられておらず、トップマネジメントの関与も限定的
と記されています。
所感
日本におけるダイバーシティ・マネジメントは、2008年以降の20年弱において、少なくとも「トップマネジメントの関与」は大きくなっているように思います。
大企業でも経営トップに女性が登用されることも珍しくなくなりましたし、女性管理職比率や外国人、障害者などのマイノリティの活躍も目まぐるしいです。
一方、「組織変革・ビジネス上の効果」については、女性活躍、育児・介護の取得によるエンゲージメントの向上が明らかになってきています。
私の専門の「障害者雇用」においては、以前に何度も触れていますが、影山先生がおっしゃった「組織内マクロ労働生産性」という考え方で、ビジネス上の効果も記されるようになりました。が、まだまだ一部だと思っています。
私としても、職場づくり、ワーク・エンゲイジメントといった文脈で、組織変革やビジネス上の効果を追求しながら、社会をちょっとだけ変えるお手伝いができたらと、日々努めているところです。
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