文献調べ 24-15 運動の逆説性 〜知的障害を考える〜
知的障害者の心理学研究の中に「運動の逆説性」と呼ばれるものがあります。
その意味は”簡単と思われる行為に困難を示し、難しいと思われる行為について容易に達成する(奥住・平田,2016)”です。
「片足立ち」と「平均台歩行」、どちらもバランスを試される運動ですが、みなさんはどっちが得意ですか?
(余談ですが、先日家族でディズニーシーへ行ったのですが、昔は超得意だった絶叫系の乗り物であっという間に気持ち悪くなってしまい、ショックを受けております。歳と共に運動機能って変化しますね。。。)
一見すると「平均台歩行」の方が難しげに感じてしまいますが、知的障害の方の中には「片足立ち」が苦手でも「平均台」は難なくクリアできるという人が少なからずいらっしゃいます。
これが「運動の逆説性」というようです。
一方で、「片足立ち」に困難さを示した方に、平均台の上で「片足立ち」をするように指示すると、持続時間は顕著に延長するようなのです。
これは何を示しているのでしょうか?
平均台って「こっちからあっちまで渡るんだろう」というゴールが見えやすいですよね。「片足立ち」はいつまで、どこまで、といったゴールが見えにくいです。
つまりこれって「課題の意味」とか「手がかり」によって、人は「できるようになる」ということを示しているのではないでしょうか。
言い方を変えると「環境」によって、人は「できる」ということです。
もう一つ、知的障害者の心理学研究で興味深い話があります。
「行為の遅さ」を「知の多様性」として捉えようという研究の方向性です。
知的障害の方に何かしらの仕事をお願いした場合、すごく時間がかかるというのは私も何度となく感じてきたことです。その度に未熟な私は「もうちょっと早くやろうね」と声をかけたものでした。
これは知的障害のない私からみると「遅い」ことですが、知的障害の方が”安全性・正確性を優先する個性的な認知(奥住,2019)”によってじっくりこう行為を行なっているという考えることもあることを知り、今になって反省しております。
その方の見え方や感じ方を”「丸ごと」活かす社会への成熟・発展(奥住,2019)”に向けた知的障害者支援について、私も学びを深めていこうと感じた桜の花びら舞う春の日でした。
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