文献調べ 24-6

今週は3冊。重要だと思う箇所の抜書きと所感を述べます。
※個人的に重要だと思った部分の抜書きですので、意味が通じないところもあるかと思いますがご容赦ください。

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『障害社会学という視座』(榊原賢二郎:編著)

・繰り返し公にされてきた偏見に晒されてきた障害を持つ人びとの中から、自身の生活経験を発達障害の概念を用いて把握し、さらにはみずから研究を組織してこの概念を捉え直していく動きも現れている(綾屋・熊谷,2008)

・発達障害支援法によると発達障害の概念はその下位概念として自閉症やアスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害などを含んでいる。いずれの障害も「脳機能の障害」であると捉えられている。

・発達障害とは生物医学的観点から人々の状態を呼び指す概念であるとひとまず言える。

・支配―従属関係をもたらす社会編成のあり方が、個人を無力化する抑圧として批判され、その改変を通じての障害者の解放を目指す障害の社会モデルが提起(Zola,1972)

・ゴッフマンは、問題を患者の中に位置付けていく作業のことを「翻訳過程(translation process)」と呼ぶ(Goffman,1961)

・発達障害に関わる医学的診断が、その診断を付与される人々にとってあらたな自己のアイデンティティと社会関係とを作り上げる契機となっている(ニキ,2002;綾屋・熊谷,2008)

・診断概念と自己のアイデンティティとを捉え直し、この診断概念と結びついた制度的実践をもあらためていく可能性を提供していると考えることもできる。

・障害社会学(障害の社会学)は、障害をめぐる社旗構造的制約や常識力の解放を、解放が制約ともなりうる逆説に向き合いながら、なおも目指し続ける学問領域である。

・逆説に正面から取り組む点で、障害社会学は障害学と呼ばれる領域と異なる。

・障害学は、障害を個人の医学的問題として捉える「医学モデル」に対峙して、障害者の身体ではなく障害者に不利益を与える社会を問題の中心と捉える「社会モデル」を提唱。解放の学問であると同時に制約でもあった。

・障害社会学は、障害学の達成を十分に踏まえつつ、障害学の制約からの解放をも図る。

・「○○社会学」のように、個別の領域を研究する社会学を、連字符社会学と呼ぶことがある(Mannheim,1932)※連字符とはハイフンのこと

・「障害の社会モデル」とは、イギリスのマイケル・オリバー(Oliver,1983)によって与えられた。オリバーによれば、障害の社会モデルとは、既存の障害観は(「障害の個人モデル」)に取って代わる新たな障害観である。

・キャロル・トマスの定義_障害とは一種の社会的抑圧であって、損傷を持つ人々に対する活動制約の社会的賦課、および彼らの心理情緒的充足(psycho-emotional well-being)の毀損の社会的産出を伴うものである。(Thomas,1999)

・損傷の定義として_損傷とは、西洋文化において社会的に定義された、より精確には医学的に定義された「正常な類型からの優位な偏差=逸脱」または「異常」を示す標識(markers)となっている、身体に関する変異のことである(ibid;124)

『発達障害からニューロダイバーシティへ』モナ・デフラーク

・行動の広い定義は、人の内的な身体的プロセスや環境からの情報をどのように処理するかといった知覚、感情、思考、意図が外に向かって表れるもの

・その裏にあるものをよく見ない。

・氷山と同じように、水面下には、目には見えないけれど、大きくてはるかに重要な部分があります。ここには、子供の行動の「理由」を理解するのに役立つ貴重な情報が隠されており、考えられる原因やトリガー(引き金・きっかけ)についての豊富な手がかりも含まれています。

・行動反応は、人の神経系がストレスに対する身体の反応をつねに調整している様子を表している。

・ニューロセプションとは、環境の安全性と脅威を、脳と身体が無意識のうちに監視していること。

・関係性の安全性を最優先にして介入すると、臨床的アプローチや子育ては、すべて恩恵を受けることができる。

・個人差とは、私たちが自分の周りの世界をどのように受け止め、どのように反応するかを形成する特徴や資質のこと。身体的プロセス、感覚、感情、思考、およびそれらの組み合わせを体験する方法など。

・子供は管理可能なストレスを与えられると、新しいことを学び、ストレス耐性と回復力を高めていく。

『精神障害者支援の思想と戦略』田中英樹

・エンパワメントとは、利用者が生活の主体者として自己決定能力を高め、自己主張し、生きていく力を発揮していくこと

・利用者と地域社会が有する「ストレングス」を評価し、積極的に活用しようとするのがストレングスモデル

・エンパワメントとストレングスには共通性があり、ストレングスはエンパワメント実践を行なっていくための土台

・「潜在的に備わっている能力」を肯定的に正当に評価すること、「モチベーション」に重点を置き、支援目標を契約していること、自尊感情や自己評価を高め、意識化を図ること、過去ではなく「いまここで、これから」を重視すること、「個人のエンパワメント/個人のストレングス」と「地域のエンパワメント/地域のストレングス」を引き出すこと、ごく普通にある地域の資源を活用するといった共通性。

・リカバリーの本質的な意味は、精神障害当事者自身が病気や障害を抱えながらも自らを社会的に再生・再構築していくプロセスであり、「人生の再建」という実存的価値や哲学的指針を表現した概念。

・ストレングスモデルの魅力の1つ目として、「ストレングス」という視点の優位性。その人に備わっている特性、技能、才能、能力、環境、関心、願望、希望。・2つ目の魅力は、アセスメントの素晴らしさ。7つの生活領域と3つの時間軸に体型づけられている。アセスメントはその人の持っているものと望むものの一覧表。・3つ目の魅力として、環境が持つストレングスを含め、個人の強みとの両面を評価し活用していること。・4つ目の魅力として、地域資源の見方や社会資源開発の実践性。・5つ目の魅力は、個別ケアプランの有効性。

○一言所感

「精神障害者支援の思想と戦略」は、先週から学びを深めている「ストレングスモデル」を扱った事例紹介などもあり、非常に読み応えがありました。私自身は、チャレンジドの治療者や直接の支援者ではありませんが、たとえばコンサルテーションにおいてはコンサルティからの「クライエントに対する否定的な評価」に対しては、ストレングスに目を向けるような(間接)支援をさせてもらっています。

また、「発達障害からニューロダイバーシティへ」にもあった、行動の理由を考えるという言説にも非常に共感します。ストレングスに目をやるといっても、我々の抱く価値観や判断基準、それを表出した行動はまさに人それぞれですので、他者のストレングスに対する共感的理解はなかなかに難しいです。その際に、行動の背景を考える。氷山モデルでいう「見えていない部分」を多角的に思考するというのは、システマチックなアプローチだなと思います。

「障害社会学という視座」では、「障害の社会モデル」の批判的な論調も垣間見れ、非常に有意義でした。特に「軽度や目に見えない障害のある人を『周縁化』する」という意見は、なるほどそうだなと感じました。折りしも、来月初旬に東大の星加良司先生とお会いする機会があるので、色々と聞いてみたいなと思いました。

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