文献調べ 24-5
「ストレングスモデル」について書籍、論文から調べました。重要だと思う箇所を抜書きし、所感を述べます。
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「ストレングスモデル」 チャールズ・A・ラップ、リチャード・J・ゴスチャ
・リカバリー志向は、私たちを「病気」と「欠陥」から解き放ち、人間のもつ可能性とwell-beingへと向かわせるだろう
・“リカバリーは、1つの過程、生活の仕方、姿勢、日々の課題への取り組み方である。それは、完全な直線的過程ではない。ときに私たちの進路は気まぐれで、私たちはたじろぎ、後ずさりし、取り直し、そして再出発するのだ。必要なのは障害に立ち向かうことであり、新たな価値ある一貫性の感覚、障害の中で、あるいはそれを越えた目的を回復させることである。熱望(aspiration)は、意義ある貢献ができる地域で生活し、仕事をし、人を愛することである”(Deegan,1999)
・転帰としてのリカバリー
▷希望_目的達成のための精神的な意志力と手段力の総和」(Snyder,1994)
▷レジリエンス_生活状況がストレッサーと緊張に満ちているときでも、柔軟性を保持し、前向きの適応をする能力(Ridgway,2000)
▷エンパワメント_ストレングスモデルでは、精神障害者が願望し、クライエントと専門家が協力して達成を目指す状態。
客観的事実 | 主観的事実 | |
選択肢 | 選択権または選択肢 | 選択権の認識 |
権力 | 権限 | 自信 |
▷統合(integration)_「集団特性において異なる個人が共通して平等にもつメンバーとしての地位に基づき、彼らを社会や組織に組み込むこと」(Webster’s Third New International Dictionary,1976)
個人のストレングスの要素
・願望、能力、自信
相互作用として
願望×能力×自信=見込みと可能性
例:願望(フルタイムの事務仕事)×能力(正確なタイピング、根気強さ)×自信(申し込む意志、面接を受ける意志、仕事を始める意志)
環境のストレングスの要素
・資源、社会関係、機会
ストレングスモデルの原則
1 精神障害者はリカバリーし、生活を改善し高めることができる
2 焦点は欠陥ではなく個人のストレングスである
3 地域を資源のオアシスとして捉える
4 クライエントこそが支援過程の監督者である
5 ワーカーとクライエントの関係性が根本であり本質である
6 私たちの仕事の主要な場所は地域である
資源の獲得
教訓として
・人は助けたがっている
・人は、情報と支援を必要とする
・クライエントが望んでいることが取り組みを駆動する
社会資源の領域ー4つのA
Availability 利用可能性
Accessibility 接近可能性
Accommodation 適合性
Adequacy 妥当性
ストレングスモデルを支える背景
クライエント中心マネジメントの原則(Gowdy&Rapp,1989)
1 「クライエント」と呼ばれる人々を敬うこと
2 焦点を創り、維持すること
3 不可能だと簡単にあきらめない健全さをもつこと
4 生活のために学ぶこと
やる気を失わせる行動
・病名やレッテルに焦点を当てる
・その人の価値を認めない
・自分の生活の基準を強要しようとする
・相手を見下すような会話
・子供扱い
・条件付きの褒め言葉(よくやったね、でも、、)
・無視
・クライエントの時間を尊重しない
・親のような態度
希望を引き出す行動
・傾聴
・話したいときにそばにいる
・気遣いと優しさを示す
・楽しいことを一緒にする
・肯定し、力づける励ましをする
・失敗も成功もそのまま受け入れる
・全ての過程において意見や選択を尋ね、尊重する
・自分も同じ人間であることを知ってもらう(私が間違えた、と言える)
・時間、約束を守る
・うまくいかない時は、その人の過去の成功した経験を思い出させる
・成果や成功を祝う
・目標設定を支援する
・目標を実現可能な段階に分割し、小さな一歩を認める
・たくさんの選択肢を作り出す
ストレングスモデルに基づく職業訓練を受けた精神障害者の心理面と必要とされる支援
(安藤、川野,2012)
・精神障害者の就労支援を進めるために、職業訓練を受けた訓練生の心理面と必要とされる支援をストレングスモデルにも基づいて調べたもの
・近年の就労支援で最も注目されているモデルの1つにストレングスモデルがある。
・精神障害者はストレスに対する脆弱性を持ち、セルフスティグマ(自己に対する烙印、負のイメージ)の形成により自尊感情や自己効力感を減じる可能性がある(石垣、道又,2010)
・就労により自尊感情や自己効力感が高まる(田中,2009)
・自信の要因として「自己効力感」や「自尊感情」は重要
・目的として、訓練生の心理面として「自己効力感」「自尊感情」「アイデンティティ」の程度をしらべること。訓練生が必要と考える支援を調べること。
・自己効力感の5つの下位要因「日常生活」「治療に関する行動」「症状対処行動」「社会生活」「対人関係」では「治療行動」が最も高い。これは、訓練生が病院へ定期的に通院し、正しく服薬でき、副作用にも気づくということに自信があることを示す。
・「対人関係」の得点が低かった。周囲の人と積極的に関わったり、自分の悩みを周囲に相談することの自己効力感が低いことを示す。
・対人関係の自己効力感を高める支援には、支援者が一緒に課題を乗り越えようとする姿勢が重要(太田,2009)、具体的な支援法としてSSTが有効(鈴木,1996)
・自尊感情は、健康な大学生より低い。精神症状は自尊感情に影響する(國方ら,2006)ことから、症状をコントロールすることは重要
・アイデンティティは健康な大学生より高い。自己実現に向けて就労するという明確な目標をもっているためと考えられる。
・本研究の結果をストレングスモデルから考えると
▷「個人のストレングス」として、「高いアイデンティティ」をさらに伸ばす
▷対人関係など「低い自己効力感」や「低い自尊感情」は向上するような支援
▷「環境のストレングス」として訓練生が必要とする支援を可能な限り実現
看護学生が精神保健看護実習でストレングスモデルを自身の看護に取り入れるプロセス
(片山ら,2023)
目的:看護実習において学生がストレングスモデルを自身の看護に取り入れるプロセスを明らかにする
・誰もが持っている「問題と向き合っていく力」を信じ「希望」を支援するモデルRapp&Sullivan,2014)
・当事者のストレングスを実感した学生は、当事者もまた自身のストレングスに気づき、その夢やした
ことといったこれからのことを考えていることに気づいた(Tse et al., 2021)
・ストレングスモデルでの支援は、当事者の行動化の前兆(Barryet al., 2003)
・学生は、当事者が夢やしたいことを実現するために行動する姿から「実現できるかもしれない」と実感することで、夢やしたいことに添っていた。
・当事者を尊敬し親身になることは当事者と本当の信頼関係を築く土台となっていた(Onken et al.,2002)
・教員や当事者から自身のストレングスを言われたり、共感されたりする体験から、新鮮な驚きと共に自身のストレングスを新発見していた
・ストレングスモデルは当事者の自己決定を支え、主体的に生きることを支援するモデルであることを学生は実感(Pullman et al., 2023)
○一言所感
「ストレングス」への注目は、特別支援教育でも声高に叫ばれ始めて久しいです。これまでの治療的な「弱い部分」への注目よりも、その人の「強い部分」に焦点をあてた支援により、当事者の自身、自尊心などを高めることができます。
ラップとゴスチャのいう、やる気を失わせる行動や希望を引き出す行動などはそのまま企業での人材マネジメントにも活かせるものです。
また、「得意をより伸ばす」という「強い部分をほっとかない」という姿勢は個人的にすごく好きです。「これができたら次はこれね」と無限課題に取り組むのでは希望が見出せず、次々に表れる壁に向き合う中ですっかり自信をなくすことも考えられます。
また印象的だったのが看護学生の実習中の研究です。いわば、自分の成功体験などの語りから当事者への支援姿勢が変容していくのはいい話だな〜と思いました。
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