勉強会「産業保健領域から考える障害者雇用」
TOMH(東京大学職場のメンタルヘルス専門家養成講座)の同期の方々と勉強会を行いました。
僭越ながら私がファシリテーターを担当させてもらいました。
ご参加の方々は、産業医、産業保健師、産業心理師として、企業の「産業保健領域」を担われているプロフェッショナル。
近年では「障害者雇用」に関するご相談も多いようでして、ならばと今回の勉強会の開催となりました。(ご提案くださったIさん、ありがとうございます!)
差し障りないと思われる範囲で内容を共有します。
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アジェンダ
① オープニング
②−1 質疑応答
②−2 情報提供
③ クロージング
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①オープニング
汐中の今さらな自己紹介(割愛)
②−1質疑応答
・事前にgoogleフォームにて伺っていたご質問。差し障りないと思われる範囲でご紹介すると
▷合理的配慮の提供プロセス(他社事例含め)
▷精神障害者の方の雇用にあたっての配慮事項(専門職として伝えられること)
▷障害当事者の職場適応支援
など。
▷合理的配慮の提供プロセス
・合理的配慮の性質_障害者と事業主との相互理解の中で提供される
・障害のある労働者の有する能力の有効な発揮の師匠となっている事情を改善するために講ずる
・手続きとしては、「募集・採用時」と「採用後」がある
・「募集・採用時」は障害者からの申し出。「採用後」は事業主から障害者に対しての確認
・双方での話し合い。措置の確定に関する理由の説明
・合理的配慮の措置が「過重負担」に当たると判断した場合は、実施できない旨を当該障がい者に伝え、理由を説明する。
・事例:某社さんでは本社の人事担当者が全国の事業所に出向き、上司と障害のある社員双方へのヒアリングを実施。設備の改善にはいくつか着手(身障者用の駐車場、自販機、スロープの設置など)。
(Hさんからの質問)手帳のない方などへのヒアリングはどうするか
→ヒアリング対象者となるのはやはり手帳を持っている方のみ。グレーな方への対応は今後の課題となるだろう。クローズ就労(手帳の保持を開示しない)方へのヒアリングは慎重に段取りする必要あり。
▷精神障害者の方の雇用にあたっての配慮事項(専門職として伝えられること)
※今回は「発達障害」に限定して意見交換しました。
・「発達障害」の中でもASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)の方の職場でのよくある事例の紹介_「指示が伝わりにくい」「言動が軽率」「不注意によるミスが多い」「場の雰囲気をつかめない」など。これにより「業務内容の指示や進捗管理に手間がかかる」「他の部下や同僚の不満が溜まる」などの「上司の困惑」もある
・専門職として伝えられることとしては、「障害特性」と「動機づけ」かと思う
・「特性」としてASD(自閉スペクトラム症)は「感覚過敏」、ADHDはワーキングメモリーの不全などの理解を促したい。
・「動機づけ」として、ASDは「指示に納得」しないと動かない傾向。また業務の変更を拒んだり、主観的な出来栄え(瑣末な仕上がりにこだわる)なども「動機づけ」としてはある。→介入は難しい。ADHDは「遅延報酬障害」が影響する。目の前の「利益」に注目して、長期的(腰を据えた)課題解決に向かない→仕事の途中で声をかけることが有効
・「場の雰囲気をつかめない」中で、憮然とした表情やストレートな物言いなどがある。そのあたりは「気にしない」というこちら側の心構えも必要
・目に余る部分を注意(フィードバック)する際は、落ち着いた時に、状況→振る舞い→影響の順に伝える。
例:会議で田中(仮名)さんが発言していた時→あなたは大きなあくびをした→田中さんがそれを見て、発言が止まった。誰かの発言時にはあくびはしない。したくなったら手で口元を隠す。みたいに。
▷障害当事者の職場適応
・ある当事者の方と周囲との関係が悪い。以前いた調整役の人とは良好だったが、その方は退職された_以前いた方と連携できるのであれば、「接し方の引き継ぎ事項」などをインタビューしては
・「共感的な姿勢」を示すことで関係がよくなるという事例もある
・その他、対応例として「対人交渉業務を避ける」「ルーチンワークの担当」「視覚情報を与える」「仕事は順を追って依頼」「雑音が多い環境は避ける」などがある
②−2情報提供
・駒瀬先生から「感謝法」の講義をいただいたが「感謝」は障害者が働く現場でも大事と考える
・「高ダイバーシティ職場」での「感謝」の活用が「人間関係のまとまりを促す」「コミュニケーションの充実」「情緒的コミットメント」に関連するという研究
・産業保健の立場から「ありがとう」を伝える
(Iさんから)「相談してくださりありがとうございます」といった姿勢をとりたい
③クロージング(略)
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ご参加くださったみなさん、ありがとうございました!
みなさんからの鋭い質問に汗だくでしたw
これからも一緒に学び続けましょう!!
ご参加くださった渋谷さん(写真だと右側の上から三番目)が来月の第31回日本産業ストレス学会でご登壇されます。
https://procomu.jp/jajsr31/program.html
興味のある方はぜひ!
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