障害者雇用における上司・同僚の意識と職場課題〜障害者総合センター(2022)の研究から学ぶ/文献調べ 24−26

(本記事は2024年11月29日に更新しました)

障害者雇用の成功には、職場全体の受容や同僚・上司の理解が欠かせません。

本記事では、障害者職業総合センター(2022)の研究「障害等により配慮が必要な従業員の上司・同僚の意識に関する研究」をもとに、職場や同僚が抱える課題を具体的に掘り下げます。


目次

職場における障害者受け入れの重要性

仕事を持つことは、障害者にとって社会的孤立を軽減する貴重な機会です(Hall & Las Heras, 2010)。

特に同僚からの受け入れられることは、障害者の持続可能な雇用の基盤となります(Vornholt et al., 2013)。

職場での「受け入れ」は、障害者の定着効果だけでなく、職場の協力関係やモチベーションにも影響を与えるため、組織的な取り組みが求められます。


社会的統合と介入プログラムのポイント

障害者の職場適応を支援する「介入プログラム」の成功事例には、いくつかの共通点が見られます(Chadsey et al., 1999)。

  • 成功する職場の特徴
    • 障害者と同僚が頻繁に顔を合わせる機会がある
    • 上司が仕事以外の場面でも積極的に交流している
  • 失敗しがちな職場の特徴
    • 上司や同僚が障害者とほとんど交流しない
    • 就労支援者が過剰に介入し、逆効果を生む

障害者と同僚が「同じ時間」「同じ仕事」を共有する環境づくりが、職場の統合を促進するカギとなります。

また、「雇用環境における社会的統合にグループ間接触理論の応用研究(Novak & Rogan,2010)」では、同僚と障害者の接触条件が「社会的統合」において必要と考えられています。条件として

第1条件:障がい者が、同僚と交流する機会(交流機会の多さ
第2条件:障がい者と同僚の間の地位の違い(指揮系統、職責、報酬の同等さ
第3条件:同僚が障害者に仕事を頼っているか(障害者の働きに結果を求めている
第4条件:職場環境の平等性、寛容性、受容性(上司の障害者に対する態度
第5条件:社会的・行動的規範が作用する職場文化(職場の雰囲気、従業員の積極的な友好さ
さらに重要なこととして
1 同僚と物理的に近い場所で仕事
2 食事の時間を含めて同僚との自然な交流の機会の確保

が示されています。

特に障害者に仕事を任せ、結果を求めるという条件はDE&Iの概念に照らし合わせても、健常者社員へ公平性を示すという意味でも大切なポイントです。

※社会的統合(Social integration)=障がい者が新たに従業員として職場社会に組み込まれるプロセス


障害者が受けている「配慮」への職場の反応

障害者への配慮が、職場で不公平感を生むこともあります。特に、自身の報酬や成果が減ると感じた場合、同僚は配慮を否定的に捉える傾向があります(Colella et al., 2001)。

一方で、障害者が同僚の業務に組み込まれ、相互に依存する関係が築かれると、配慮を正当なものとみなすケースが増えるとされています。この点は、職場設計やチーム編成において考慮すべき重要な要素です。


同僚や上司が感じる困難感とは

特例子会社などでは、上司や同僚が以下のような困難感を抱えることがあります(上村, 2013)。

職場内支援の困難感

  • 障害者が注意されることに過敏に反応する
  • ストレスによる二次障害への懸念

コミュニケーションの困難感

  • 「何をしたいのか」がわからない
  • 返事があるが意図が伝わらない

その他の課題

  • チーム全体での価値観の統一の難しさ
  • 支援の範囲や役割分担の迷い

これらの課題は、適切な支援体制や教育プログラムの整備で改善可能です。


課題解決に向けた所感

本研究から、職場環境の改善に向けたいくつかの示唆を得ました。

特に印象的だったのは、「挨拶」だけでも職場全体にプラスの影響を与えるという点です。これはシンプルかつ即実践できる取り組みであり、多くの企業にとって導入しやすいものです。

一方で、否定的な上司の姿勢や態度を変えるのは容易ではありません。組織全体での意識改革を進めつつ、上司に対する教育や研修を充実させることが必要でしょう。


結論

障害者雇用における職場課題は、同僚・上司の意識や職場文化に深く結びついています。

「受け入れ」や「社会的統合」をキーワードに、組織全体での取り組みを強化することが、障害者雇用の成功につながるでしょう。本記事が、障害者雇用推進の一助となれば幸いです。


参考
「障害等により配慮が必要な従業員の 上司・同僚の意識に関する研究」(障害者職業総合センター,2022)


上司への教育、研修をお考えの担当者様、ぜひ一度お話を伺わせて下さい。弊社がお役に立てると思います。

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