小田切・森・田中(2020)
以下、抜粋と気付きなど
○障がい者がいきいきと働けるような配慮や職場環境整備を検討が論文の目的
<問題と目的>
・労働力の確保が喫緊の社会問題(上林,2016)の解消につながるのが「障害者の雇用機会の確保・拡大」
・一方で、就業・雇用継続には様々な課題が存在
・例えば、精神障害者_服薬の影響による活動性の抑制、限られた生活環境で過ごすことのよる人間関係構築能力の乏しさ(高畠,1993)
・ASD(自閉スペクトラム症)_仕事に対するモチベーションなど、仕事に直結しないが就労生活に間接的に関連した内容に関する問題が離職理由(梅永,2010)
・職場としてどのような配慮を行なっていくことが望ましいか検討するため、「機会創出・拡大」と「ワーク・エンゲージメント」に着目。
<障がい者雇用の現状と課題>
・障がい者雇用政策における「機会創出・拡大」を目的とした各国の法的なアプローチには
「障がい者差別禁止法」or「法定雇用率制度」の2パターンがある(工藤,2008)
・「差別禁止」アプローチの代表例はADA(Americans with Disability Act)がある
・ADAでは、職務再編成、労働時間変更、施設へのアクセシビリティなどの対応
・近年では世界的に機会均等と人権保障に重き。障がい者差別禁止法によるアプローチが強化(O’Reilly,2007)
・「法定雇用率」アプローチは、ドイツ、フランス、アジアなどで導入。日本も長らくこのアプローチのみ。
・課題として、雇用よりも納付金を納付する傾向、経済的に不況な状況では効果が減少するなど、そもそも障がい者雇用の促進につながっているか不明確(障害者職業総合センター,2002)
・これら2つの違いについて
「差別禁止アプローチ」_労働市場への間接介入、職場環境改善を強制
「雇用率アプローチ」_労働市場への直接介入、職場環境の調整や改善などは企業の自主的な判断
→このことが継続雇用の困難さに繋がる一因と考えられる
※障害者雇用促進法の改正で、差別禁止・合理的配慮提供義務が追加されているが、現状は法定雇用率制度の効力が依然強いとの見解
<障害のある労働者に対する配慮の実際>
・企業側の雇用した障害者への対応を実践する意識が低い(障害者職業総合センター,2010)
・しかし、特例子会社や一部民間企業では、障害者も重要な人財として捉え、働きやすい職場作りに取り組んでいる実例も見られる(山田,2015:三平,2012)
・アメリカのADAでは合理的な配慮の内容を、①施設へのアクセシビリティ、②職務の再編成、③パート化または労働時間の変更、④空席職位への配置転換、⑤機器・装置の取得・改造、⑥試験・訓練教材または方針の変更、⑦朗読者や通訳の配置などの対応の重視、と定め、その対応がない場合は差別に該当(工藤,2008)
・山田、三平、ADAの労働環境の整備は働きやすさ向上のためにも早急に実践が望まれる。
・しかし、Herzberg(1996)は「衛生要因」の充実は「不満足」の提言にはなるが、「満足度」向上のための「動機づけ要因」は独立して存在しているとしている。
・「動機づけ要因」に関しては「ポジティブメンタルヘルス(川上・小林,2015)」が注目(廣,2016)
<労働者の心理的健康度とポジティブメンタルヘルス>
・労働者のメンタルヘルスを良好にすることが、職場活性化、ひいては生産性向上につながる可能性がある
・メンタルヘルス対策は、メンタル不調に限定せず、ポジティブな視点での対策「ポジティブメンタルヘルス」の推進の動き(廣,2016)
・ポジティブメンタルヘルスの実践で重要なのが「ワーク・エンゲージメント」の概念
・ワーク・エンゲージメントの高低を規定する要因として「ソーシャル・サポート」「自主・自立」「学び と成長の機会」「フィードバック」の4つの因子(Schaufeli, Bakker,Van,2009)
ソーシャルサポートについては近年、「サポート源」に注目
・ストレスチェックの「新職業性ストレス簡易調査票」でもサポート状況を問う項目
・新職業性ストレス簡易調査票では、個人の作業レベルでの職場環境・業務性質が良好であることがワーク・エンゲージメント向上に資する可能性(小田切・森,2018)
<まとめ・今後の展望>
・障害者差別禁止法的アプローチが国際的には優位
・日本は企業が障害者を雇用することに強制力。雇用した後の職場環境の調整や改善は自主的判断。
・特例子会社や一部民間企業での実践や、ADA規定の配慮としては、職場・施設へのアクセシビリティ、機器・装置類の整備などハード面と、勤務時間や職務配置、能力開発といったソフト面の両面での対応
・働きやすさは「ハード面」、ワーク・エンゲージメントは「ソフト面」
・今後の日本の障害者雇用において必要なのは、表4
・今後は勤続年数や心理的健康度にも注目した「働き続けたくなる会社づくり」に向けた配慮や職場環境整備が行われる必要がある。
・取り組みや取り組みを行おうとする職場風土は、すべての労働者の働きやすさ・働き続けたいという意欲の向上にも好影響を及ぼすと考えられる。
汐中一言感想:最後の一文がめっちゃ好き
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