障害者雇用に関する論文や書籍の紹介と個人的なレビューです
今回ご紹介するのは、山口大学教授:有村貞則先生の論文です。
ダイバーシティ・マネジメントとは「すべての従業員の潜在能力を生かす職場環境作り」であり、その前提をもってすれば障害者雇用とダイバーシティ・マネジメントの双方は非常に整合性があります。
一方で、女性活躍のような場合では多様な人材の活用によって「競争優位や組織パフォーマンスの向上」に注目が集まります。この条件に照らし合わせると、障害者雇用とダイバーシティ・マネジメントが整合的には思えなくなります。
どちらが正しい認識なのかについて、ダイバーシティ・マネジメントの創始者ともいえるルーズベルト・トマス(1991,2010)を手がかりに検討している論文です。
ダイバーシティ・マネジメントの定義と変遷
トマスの著書の中ではダイバーシティ・マネジメントを
すべての従業員が有効に機能する環境を構築するための包括的な経営プロセス
としています。有村先生はこれを
”全ての従業員の潜在能力を活かす職場環境作り”
と解釈しています。(こちらの方がわかりやすい。)
トマスは「多様な人材の管理方法」に関しする文系のサーベイを行った結果、2つの問題点を発見しました。
人材の管理方法に関する問題点
1つが、「経営視点の欠如」であるといいます。
多様な人材が人種問題や法律、道徳、社会的責任の視点ばかりであり、「企業の利益/利害を重視する」という経営的視点がないのだそうです。
2つが、「主流自体の見直し・変革の視点の欠如」です。
女性や黒人の方への「主流にうまく同化するサポート」ばかりが取り上げられていたという。つまり、「既存の組織文化と制度の見直し/変革」の視点が重要ではないかという問題提起です。
この2つも問題点に加え、次の3つについても考慮した「新しい多様な人材管理方法」を構想を考えています。
①マイノリティ全般に適応可能
②全てのマネジャーの支援を意図
③普遍化
「普遍化」だけは少し解説を加えておきます。
人種や民族、性別のみならず年齢、職能、教育歴、など様々な次元で従業員は異なるとした上で、こういった労働力の「多様性」を網羅しないといけません。
「全般」「すべて」「様々」という言葉は、対象や範囲を限定しないという意味合いを持っているため、この論文では「普遍化」と呼ぶとしています。
以上の視点をまとめると「経営的視点」「既存の組織文化と制度の見直し/変革」「普遍化」がダイバーシティ・マネ人面との理解に重要なポイントとしています。
つづく
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