発達障害について考える(LD編①)

これまで、自閉スペクトラム症やADHDについて考えてきました。

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今回はLD(学習障害)について考えていきましょう。

私自身の経験でもそうですが、皆さんもこれまでの学校生活で、国語の音読がたどたどしかったり、みんなの前に立って話すことが苦手だったり、ノートのマスからはみ出さないように字を書くのが苦手だったりした友達がいたはずです。

そういった「学習の難しさ」は、もしかしたらLDの特徴があったのかもしれません。
※自閉スペクトラム症もADHDも、それらしき特徴があるからといってすぐに診断が下るわけではないです。誤解のないようにお願いいたします。


目次

LDってなに? 〜捉え方もいろいろ〜

LDとは何の略称なのでしょうか。これはLDの方を「どう診るか」という立場によって、若干の定義や解釈に差があります。

Learning Disabilities(学習上の障害)という名称は、知的障害の研究をしていたサミュエル・カーク(Kirk.S.A)が1963年に提唱したことから始まりました。

しかし「障害」という言葉自体のインパクトは大きいため、当事者の自尊心を傷つけるおそれもあります。

そこで、例えばアメリカのほとんどの州の教育現場では、Learning Differences(学び方の違い)としてLDを捉えています。こうすることで、当事者にとって最適な学びを考えていこうという前向きな姿勢がとれるのです。

また医学上ではLearning Disorders(≒学習障害)と捉えられることもありますし、診断のルールブックともいえる「DSM-5」では「限局性学習症(SLD)」となっています。

立場や考え方でLDの捉え方も違うのですね。


LDの定義

ではLDの定義はなんなのでしょうか?

ここでは文科省の定義を参考にしてみます。

学習障害とは、全般的に知的発達に遅れはないが、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった学習に必要な基礎的な能力のうち、一つないし複数の特定の能力についてなかなか習得できなかったり、うまく発揮することができなかったりすることによって、学習上、様々な困難に直面している状態をいいます。

文部科学省

上記にあるように「学習」の全てではなく「聞く」や「話す」など特定の能力の困難さを示すものです。(とすると「限局性」という言葉もしっくりきますね)

困難を示す領域

各能力とは

  1. 聞く能力:他人の話を正しく聞き取って、理解すること
  2. 話す能力:伝えたいことを相手に伝わるように的確に話すこと
  3. 読む能力:文章を正確に読み、理解すること
  4. 書く能力:文字を正確に書くこと
  5. 計算する能力:暗算や筆算をすること。数の概念を理解すること。

を指します。

これらを症状別にカテゴライズしてみること、下記の3つになります。

  • 読字障害・・・読むことの困難さ
  • 書字表出障害・・・書くことの困難さ
  • 算数障害・・・数や推論の困難さ

先ほども言った通り、LDの人が全ての症状を抱えているわけではないです。


背景にある「認知特性」

私たちは、目で見たものや耳で聞いたことを、頭の中で記憶と照合するなどの処理をして、動作や言語などの表出に繋げます。

例えば私は幼少期から空手をやっていますが「ワンツー」と言われただけで体が勝手に「左右のパンチ」を繰り出します。

稽古で繰り返してきた動きなので記憶にいやというほど刻まれたものです。

しかし「ワンツー」と言われてもうまく体が動かない人がいると(稽古不足ということは除いて)認知特性の違いが理由なのかもしれません。

認知特性とは

目で見たり、耳で聞いたり、手で触れたり、鼻で臭ったりして入ってきた方法を、脳が整理したり記憶したり理解したりする能力のことです。

そして認知特性にはいくつかのパターンがありますが、大きくは2つに分けられます。

「視覚優位」と「聴覚優位」です。

視覚優位とは

文字や絵など、目で見た情報を理解する方が得意という人です。

聴覚優位とは

誰かの説明など、耳で聞いた情報を理解する方が得意という人です。


これは誰しもに存在する特性です。ですがこの特性に極端な偏りがあり、学習上の困難さを引き起こしているケースがLDの特徴となります。

先の空手の話で言うと、「ワンツー」と言われても体をうまく動かせないけど、パンチとキックをしているイラストをみて「これを真似して」と言われるとできる人の場合は「視覚優位」ということになります。

一般的には、いくら視覚優位といっても繰り返し「ワンツー」を練習していると自然に体が動くようになりますが、なかなか聴覚情報だけだと上手くいかないのがLDの人の「困難さ」にはあるのです。

また、認知特性以外にも記憶のシステムに問題があるケースもあります


ワーキングメモリについて

LDの方は”覚えるのが苦手”と思われることが多々あります。

それには「ワーキングメモリ」が関連してきます。

ワーキングメモリとは「短期記憶」や「作業記憶」とも言われるものです。

例えば「食器棚から2つコップを出して、1つにはコーヒー、もう1つにはお茶を入れてから、2つともお盆に入れてお客さんに出して」と、(めんどくさいことを)母親に言われたとします。(私なら「自分でやって」と言い返しますがw)

ここで、

  • 食器棚を開ける
  • コップを2つ出す
  • 1つはコーヒー
  • もう1つはお茶
  • お盆に乗せる
  • お客さんに差し出す

という一時的な記憶が必要になります。

私たちは、食器棚を開けてコップを2つ出した瞬間から、それらの記憶は「削除」します。もはや覚えておく必要がないからです。

そして次なる「コーヒー」や「お茶」や「お盆に乗せる」という記憶をもとに続く作業に取り掛かります。

LDの方はこの「ワーキングメモリ」に問題がある場合があります。

そもそも上記のような一連の作業(事柄)をたくさん記憶保持できないという困難さや、上手く削除できないという困難さ、一時的に記憶した事柄を手順よくこなすことができない困難さなどです。

それが「覚えることが苦手」という特徴として現れるのです。


さて今回は、LDの定義や症状について考えてきました。

次回は支援方法の工夫点などをみていきましょう。

【参考】

「LDの「定義」を再考する」(金子書房)小貫悟ら
「学習障害のおはなし」(平凡社)原佐知子ら

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