発達障害について考える(ADHD編②)

前回はADHDの特性や困難さの背景にある「トリプルパスウェイモデル」などについてみてきました。

この記事の目的は「職場の理解を高める」ことです。ご本人がどうやった工夫をすればいいのか、どういった自己管理の方法があるのかといった「アドバイス」的な視点は、差し出がましいので控えます。

職場で一緒に働く発達障害の方とどういった「関わり」が必要なのか、そしてその「関わり」がなぜ必要なのかをみていきます。

目次

氷山モデルで考える行動特性

ADHDの障害特性には「不注意」と「多動性・衝動性」の大きく2つあります。

「不注意」には、注意の持続が困難であったり、順序立てて考えることが苦手だったりします。

「多動性・衝動性」は静かに待つことが苦手だったり、そわそわしてしまったりがありました。

こういった障害特性が職場において働く上での困難さに繋がることもありますが、「2次障害」と言われる状態もあることを、知っておくとより理解が深まるはずです。

ここで「氷山モデル」というものを示してみます。

木村・菊池(2011)

人材開発でも用いられる「コンテンピシーの氷山モデル」は、障害者の行動の背景を理解する上で特別支援教育にも用いられます。

これは何を示しているかというと、一見して問題行動と思われるもの(例えば、対人トラブルや落ち込みやすさ、パニックなど)は、障害と環境との相互作用によって行動が生み出されていると捉えるモデルです。

例えば、注意の持続が困難だった場合。学校では「すぐにぼーっとする」と先生から何度も注意を受けてきたかもしれません。友達からも「お前はいっつも怒られているな」と揶揄われていたかもしれません。そうした経験が、自信や自己肯定感を奪っていきます。※私も若手教員だった頃、経験も理解も不十分でした。たくさん子供達の心を傷つけてしまったかもしれません。すごく申し訳なく、反省しています。そして、過去の自分のふりかえって「理解すること」の大切さが身に染みています。

障害による困難さと、周囲の人たちや空間といった要因とが相互に絡み合って、社会的には不適切な行動を生み出している可能性を示唆しているのです。

またこれは、障害者の方と共に働く職場で「あの人は発達障害だからあんな行動をとっているんだ」と思うよりも「もしかしたら関わり方や環境を変えると、あの人は変わるかもしれない」と思うことの大切さを物語っています。

「障害特性だから」で片付けてしまっては、その方の可能性を奪うことになります。

ただ一体、どういった支援や関わりの形があるのでしょうか。あくまで一例にすぎませんが、みていきましょう。

ADHDの方との職場での関わり方

環境を整える

ADHDに限らず、発達障害の方は「感覚過敏」を伴うケースもあります。

感覚過敏とは、音や光や気温などに過剰に反応してしまうことです。※感覚に対しての反応が弱い方もいらっしゃいます。「感覚鈍麻」と言います。

感覚過敏があると通常では気にならない音が大きく耳に入ってきたり、光に過敏に反応してしまったり、気温や湿度の状態が体に堪えて起きられなくなったりします。

職場では例えば

  • ヘッドフォンの使用を許可する
  • 照明や窓の近くではない場所にデスクを配置する

などが考えられます。

また「不注意」に関しては

  • パーテーションで仕切って視界に余計な情報が入らないようにする
  • デスクの上に物を置かないようなルールを作る

といったことが考えられます。

「多動性・衝動性」に関しては

  • 周囲に理解を求めた上で、ある程度の動き(貧乏ゆすりなど)を許容する

などが考えられます。

関わり方を考える

周囲の関わり方を一工夫すると、本人が働きやすくなるだけでなく「自分の障害が周囲に理解してもらえている」という安心にもつながります。

例えば「不注意」に関しては

  • あらかじめ仕事の手順を一緒に確認しておく
  • 急な行動(突然目を逸らしてメモを取り始めるなど)に関しては「『メモ取らせてください』って一言言ってからとりましょう」と教える

などが考えられます。

「多動性・衝動性」に関しては

  • 仕事リストの1つが終わるたびに報告に来させる(あえて体を動かす)
  • クールダウンの部屋を設けて、様子が変だなと思ったら「少しあの部屋で気分転換してみましょう」と伝える

などがあります。

いろんな状況が想定されるのでここでは少ししか挙げられませんでしたが、本人にも困難な仕事や支援を必要とする場面などを確認しながら、関わり方を工夫されてみてください。

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