本書は子供の発達について書かれた内容ではありますが、大人の学びについても同じ枠組みだと考えます。
いつもは書籍の抜書きですが、大事な考え方ですので今回はちょっとだけ詳しくみていきましょう。
○発達の最近接領域
心理学者ヴィゴツキー(Lev S. Vygotsky)の発達理論には「発達の最近接領域」(最近接発達領域ともいわれます)があります。
本書では
・発達には、子供が独力で問題解決できる発達の水準と単独では解決できないが、他者からの援助や共同によって解決できる発達の水準がある。発達の最近接領域とはこの両者の差のことであり、学習においてはこの差が重要となる。
・ある目標を達成するための教師による課題の変更、どの感覚で何を認識するのか(知覚)、何に意識を集中するのか(注意)、何を憶えれば良いのか(記憶)、仮説と結果をどのように照合すればいいのか(判断)といった認知過程の活性化への援助。
・問題解決能力という学習過程を発達させる。
とあります。
簡単にいうと、「ちょっと手伝ったらできる内容を見つけ、適切に支援することで、相手の成長を促せる。」ということです。
さらに、具体的な支援内容の特定には、「足場づくり(スキャフォルディング)」の考え方が有効といわれます。
ちなみに
・発達の可能性領域への支援とは、足場づくりと足場はずしであり、これによって子どもの自発的な行動が増えていくと考えられる。
とあるように、足場はいずれは外すという見通しの下で支援を行うことになります。
拙い作図ですがまとめるとこんな感じ
支援の順序としては
「発達の達成可能性課題の選定」→「課題の支援レベルの決定」→「発達の可能性領域への支援」
と記されている通り、支援があれば最終的な到達点まで達するだろうという課題の全体設計がなされた上で、支援を実践していきます。
本人の能力ややる気の見極めも重要ですので、普段から対象者の理解に努める必要があります。決して、支援者の独りよがりの支援になってはいけません。
○「シェイピング」「プロンプトーフェイディング」
相手が新しい反応(行動)を形成するための支援として「シェイピング」と「プロンプトーフェイディング」という考え方があります。
本書では
・シェイピング_目標行動に向けて段階的に行動を形成していく手続き。「スモールステップ」。1つの段階が達成可能になったら、次の指導段階へと進む。そうして最終的な指導目標まで指導を継続していく。
・プロンプト-フェイディング_シェイピングのように目標を小分けにして指導していっても、途中で適切な援助が行わなければ指導困難になる場合がある。そのような場合にはプロンプトーフェイディング法を用いる。プロンプトとは援助のことを指す。たとえば、手を挙げる見本を示すのもプロンプトである。また、指導者が子どもの手をもって、適切な反応を導くやり方(身体的ガイダンス)もプロンプトである。一方でプロンプトは最終的には手控えていかなくてはならないものである。プロンプトを段階的に手控えていくことを、フェイディングと呼ぶ。
と紹介されています。
大きな目標に向けて一直線というよりも、一歩一歩に前進できるような「スモールステップ」「目標の小分け化」をする。その中で、動作の見本を見せたり、伴走したりしながら、一歩一歩を着実に全身できる支援をします。ただしその伴走は途中で手控えていく。それにより、本人が自走できるようになるということです。(余談ですが弊社のコンサルティングもこの考え方と同じです)
本書では「手を挙げる」という行動に対するシェイピングが例示されていました。
図では行動の強化子として「賞賛」を示しておりますが、この部分はまた別の機会にお伝えします。
今回は、「障害理解のための心理学」から支援の考え方として「発達の最近接領域」「足場づくり」「シェイピング」「プロンプトーフェイディング」について簡単にお伝えしました。
何かの気づきになっていると幸いです。
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