先日の主催勉強会後、参加者で元キックボクシング世界チャンピオンの西山誠人(にしやま・まこと)さんから感想を頂きました。
その前に、まずは西山さんの紹介をしておきます。(詳細はwikipediaをご参照あれ)
東大・大学院修了後、味の素に入社。(ちなみに高校の同級生には山本KIDさんがいたそうです)
学生時代から練習を積んでいたキックボクシングを社会人になってからも続けられ、日本王座(初代J-NETWORKライト級王座・M-1スーパーライト級王座)、世界王座(WFCAタイボクシング世界ライト級王座)を獲得。2児のパパ。
一般的な格闘家のイメージとは一線を画す、知的で温和な人間味溢れる魅力がある方です。そして、とってもいいパパでもあります。
東大を出て、一流企業に入り、仕事とキックと家族を両立された上、チャンピオンとなり、果てはK-1に出場。「すごい」とため息しか出ないです。
西山さんと僕は合同練習会で出会い、そこから5年近く練習を共にしました。
出会ってからは15年以上経ちます。とはいえ一端の空手家の僕との実力差は当然に如実でして、指一本触れることすらできてません(だって世界チャンピオンですし、、、)
現在はキックを引退されて、社会人としてのキャリアを着実に積まれています。
西山さんは毎回「にちようさはんじ」に参加してくださっていますが、前回の終了後にこんな感想をくれました。
「講義を聞いて、過去に何度かあった、『何でも上手くいきそうな状態』、すなわち自己効力感の高い状態について考察してみました。」
キック時代の「成功体験」を、勉強会でお伝えした「個人の資源」に当てはめて考察してくれたのです。
「K-1への出場を強く希望した2010年頃、次々とピースがハマっていく、という経験をしました。」
「その頃のことを思い出してみると、」
「過去の成功体験=キックのベルトを取ったときの達成感」
「代理学習=63kgが始まったばかりだがTV放映もあるし目立てそうだぞ、を踏まえて」
「何とかして出たいとの強い『思い』が生まれ、伝播し、」
「周囲の励まし(関係者への面通しとかTwitterでの推薦とか)に繋がり、」
「最終、出場決定に繋がったな、と。」
「色々な要素の組み合わせであった事を確認できました。」
これを聞いた時に2つの思いが湧き上がりました。
1つは、やっぱり西山さんて素敵な人だな〜
2つは、これって「拡張-形成理論」だ!
まず1つ目ですが、西山さんの言葉には「支えてくれる周りに人への思い」が含まれているのが毎回素敵だなと思うのです。
「周囲の励まし」とありますが、西山さんは周りが「応援したくなる」「何か力になれないだろうか」と思わせる人です。
知らない人からすると個人競技の極みと見られがちな格闘技ですが、実はとってもチーム性の高い競技です。
過去に1人でも「練習から減量から当日まで、誰の力も借りず、全て1人でやってきました」という格闘家は「いない」と断言できます。
ただし、勝った瞬間に「自分の努力」「自分の才能」など、周りへの感謝を忘れて自分の手柄にしてしまう人はたくさんいます。
(自分を振り返ってもそうだったなと反省)
西山さんには「チームで勝ってきた」という思いがあるのでしょう。だからこそ、周りへの感謝を忘れないのです。
もう1つ思い浮かんだのが「拡張-形成理論(broaden-and-build theory)」Fredrickson(1998, 2001)です。ポジティブ心理学に出てくる理論です。
拡張-形成理論(broaden-and-build theory)
大森(2006)は
ポジティブ感情の経験に よって思考-行動レパートリーが拡張し,その結果個人資源が形成され,人間のらせん的変化と成長を促し,結果としてウェルビーイングにつながる
大森(2006)
としています。
ポジティブ感情とは
- 「愛情」
- 「安らぎ」
- 「興味」
- 「喜び」
- 「気分の良さ」
などを示しますが、西山さんの例であればK-1出場に対する強い「興味」がそれにあたります。
「興味」が思考、認知、注意、行動の範囲を拡張し、役立つ資源を多く獲得(周囲の協力を含む)し、個人的な能力を高め、大きな波を起こしたわけです。
※「拡張ー形成理論の図式」大森(2006)の図が分かりやすいです。
「楽しい!」という感情が沸き起こると行動的になるのは皆さんの知るところではないでしょうか。
ネガティブはよくない!と言いたいわけではないのですが、ポジティブ感情を起こすことが幸せに生きるには必要なことは確かでしょう。
※ちなみに僕が思うに、ポジティブ感情を経験する「コツ」は意外に簡単で
・良い睡眠
・適度な運動
・バランスの良い食事
です。めちゃありきたりですが。
西山さんの活躍を思い出しながら、一緒に練習できたかけがえのない時間にニヤニヤしながら、ふと、書きたくなりました。
西山さん、ご感想ありがとうございました。
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