前回の記事↓に続き、影山先生の研究「健常者の業務パフォーマンスを改善する障がい者の心理的安全性創出効果 ー請負型施設外就労の有効性と課題を視野にー (2022,影山)」から学ばせてもらいます。
2021~2022年に行われたもので、以前よりも規模を拡大した上で、障害者雇用における心理的安全性創出効果について調査されています。以下、抜書きと所感を記します。
問題の所在
・ミクロ的単体の労働生産性を問う観点からの脱却が必要。
・(職場に)障害者がいることで人間関係が改善し心理的安全性が高まれば、健常者社員の仕事に対する満足度や会社に対する求心力が上がり、業務パフォーマンスを改善している可能性がある。
・健常者の倫理観ないし倫理的性向が刺激されることに加え、配慮の雰囲気が形成され、健常者同志でも足を引っ張る行為が抑制されたり相互に配慮し合ったりする傾向が生ずることが推察される。
・障害者雇用によるシナジー効果を生むためには、健常者と障害者との密な接触が必要であり、施設外就労のようにワンクッション置く形態では、シナジー効果を期待しにくい可能性がある。
調査
・27社155名、うち健常者27社146名への調査
・帰属意識、心理的安全性、障害者との接触状況、障害者に対する対応や判断などを訊ねる質問
モデルの解釈
- 障害者との接触(図左上)が障害者のパフォーマンスの認識(図右上)に至らせる
- 障害者のパフォーマンスを認識することによって、障害者に対する印象も改善し、その結果、倫理性を高める。
- 倫理性が高まれば、障害者に対する配慮の姿勢に影響を与える(図中ほど左右)。さらに、協力の姿勢も高める(図中ほど右)
- 障害者への配慮の姿勢とそのための協力の姿勢は、相まって「心理的安全性」を高める
- 「障害者パフォーマンス」から「心理的安全性」にダイレクトにつながっている。障害者がパフォーマンスを発揮できる職場は、心理的安全性を高める環境にあると解釈できる。
- 心理的安全性は、健常者社員の職務満足度と会社に対する求心力を上げ、その結果、健常者社員の業務パフォーマンスを改善する。
結び
・障害者が健常者の心理的安全性を高め、業務パフォーマンスを改善することが示された。
・その効果を生み出すには、障害者がそのパフォーマンスを発揮できる合理的配慮が必要であり、障害者にとっても働きやすい職場である可能性が高い。
・深い接触は、障害者に対する偏見を払拭する効果を持つ
・本人の労働生産性が低くとも、人間関係の中で他者の労働生産性を高めるのであれば、その効果は個人が達成できる価値創出をはるかに超える可能性がある。
所感
2020年に仮説検証されたものに、2021−2022年で更なる調査を加えられました。
深い接触は、障害者に対する偏見を払拭する効果を持つということですが、深い接触とは、挨拶以上の会話、打ち合わせ、作業などがあたります。これらはチーム内に障害者がいるならまだしも、障害者がいない・他部署の健常者が、自発的に「接触多」に分類されるような行動をとることはなかなかに希少だと思われます。前回のブログでは「組織設計」の重要性に言及されていましたが、まさにそうだなと思いました。
障害者雇用における「組織内マクロ労働生産性」の向上について、自分としてもさまざまな場面で言及しつつ、認知拡大を図りたいと感じました。
※2020年に明らかになったモデル
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