毎月1回、オンライン勉強会を主催しています。
日曜日の朝に開催していて、その名も「にちようさはんじ」
毎回数名の参加をいただきながら、1年以上続けています。
参加費は無料なのですが、個人的な恩送りとして「参加人数×500円」を障害児入所施設に寄付しています。
今回は「レジリエンス」について考えました。勉強会で扱った内容を取り上げながらまとめてみます。
レジリエンスとは?
元々は物理学の用語でした(「ストレス」も物理学の用語)。物体に圧力が加えられて一時的に形を変えたり、元に戻ろうとしたりする力を「心の状態」に置き換えて表現されるようになりました。
バネの弾力や弾性を表す「レジリエンス」も1980年代から「逆境を跳ね返す力」という「心のレジリエンス」として用いられるようになっています。
ちなみにいろんな研究者がいろんな定義をしていますが、「跳ね返す力」というのはどの研究者に共通する表現ですのでここで用います。
課題や困難さにびくともしないのは「レジスタンス」
課題や困難さにストレスを感じて一時的な不調に陥りつつも、跳ね返せる「レジリエンス」
後者がより重要視されています。
ワーク・エンゲージメントとの関連
仕事に関するポジティブな心理状態である「ワーク・エンゲージメント」ですが、個人の資源として「レジリエンス」も重要視しています。
自己効力感などと同じで「レジリエンス」が高まることで、仕事に対してもポジティブな心理状態や態度に繋がるといわれています。
レジリエンスの度合いに”持って生まれた個人差”があるのは事実ですが、それ以外の要因も関連しています。
ここでは2つの場面、
- 状況が変えられる場面
- 変えられない場面
を想定してレジリエンスについて考えます。
状況が変えられる場合
危機や逆境に陥った際に、状況そのものが変えられる場合があります。ストレスコーピングでいう「問題焦点型」と似ていますね。
私の例で恐縮ですが、「実績不足」という理由で仕事を断られたことがあります。ここで「仕事を断られた」という事実に対してネガティブになり、落ち込み、立ち直れなくなる自分もあったかもしれませんが、断られた事実は変えようがありません。私が変えられるのは「実績不足」です。
そこから「ほいじゃあ、相手が後悔するくらい実績積んで成長したる!」と心に強く誓ったことがあります。今の私を突き動かす原動力にもなっているので「断ってくれてありがとうございます!おかげで前に進めてます」という想いです。そう考えると私にも若干「レジリエンス」があるのかなと思います。
話がそれました。
状況を変える際に必要な資質として、レジリエンスの国際尺度(RS)で用いられている項目が参考になります。
冷静な対処はまずもって大切でしょう。一旦落ち着いて物事を捉えます。そして決断をします。行動を決めることは、状況を変える上で必須です。さらにはあの手この手で苦境を抜け出す方法を見つけるのです。
「万事休す」「万策尽きる」という言葉がありますが、たいがいは「万事」や「万策」ではなく、1つか2つ試してダメなら「万事休す」と諦めるのがほとんどです。どこかに抜け出す方法がある!と探し続けるのは、レジリエンスの資質として必要です。
状況が変えられない場合
とはいえ、状況を変えられないこともあります。いや、変えられないケースの方が多いでしょう。
その場合は「受け入れる」ことも必要になります。
ただし、ただ諦めて受け入れたりひたすらに受け身になるという意味ではありません。
「柔軟性を高める」とでも言いましょうか。一般的に「心のレジリエンス」が語られる時、この「柔軟性」を指していることが多いです。
ここではSouthwick&Charney(2012)を例に柔軟性で大切なことを考えます。
柔軟性を高めるには
1つ目は、出来事を受け入れること
受け入れた上で、自分のコントロールが及ぶ部分を見分け、そこにだけエネルギーを注ぎます。
決して、自分のコントロールの及ばない部分に労力を注いだり思考を向けたりしないということです。
ラインホルド・ニーバーという神学者がいった言葉とされていますが、「出来事を受け入れる」方法についてよく表現されています。
神さま、私にお与えください
自分に変えられないものを受け入れる落ち着きを
変えられるものは変えていく勇気を
そして、その2つを見分ける知恵を
Reihold Niebuhr「平静の祈り」より
2つ目は、出来事を再評価し、失敗から学ぶこと
逆境の出来事を「他の考え方はないか」「他の人ならどう考えるか」と再評価します。
ただし、そんな余裕もない時もあるはずです。その際は、今向き合っているこの出来事は「いずれ自分の糧となるはずだ」と信じることも必要です。
ジョブズの有名なスピーチは、目の前の事象がいずれ繋がる様を見事に言い表しています。
3つ目は、ユーモアをもつこと
逆境をネタにするとでもいいましょうか。なかなかこれも難しいかもしれませんが、少し引いた目で、バラエティ番組(どっきりコーナー)の主人公が自分だと思って状況を見ると、ユーモラスな出来事と捉えられるかもしれません。
私の話ですが、かつて出会った仕事相手で、毎度ミーティング中に鼻毛を抜く人がいました。
「すみません、聞いてくれていますか?」
と問うと、「聞いてるよ!」と言いつつも、鼻毛を抜く手は止まらない。
なかなかのストレスでしたが、コンサルの友人にそれを伝えると腹を抱えて笑い始めました。
「なにそれ!めちゃくちゃ面白い話!」と。
私の中ではストレスでしかなかったのですが、側から見るとそんなに面白いのかと、悩んでいる自分すらもおかしくなった記憶があります。
ユーモラスに出来事を捉えて笑うことは「拡張ー形成理論」で考えても、視野が広がってポジティブな循環をもたらすことが分かっています。
「拡張-形成理論」について、よろしければこちらの記事をご参照ください。
4つ目は、自分自身への気づき
例えば「完璧主義」が故に、仕事が滞ったり、人付き合いがうまくいかなかったりする人がいます。
私としてはうらやまし限りですが、完璧主義が故に悩みも多いのです。
そういった場合に、少し俯瞰して「ああ、自分はこの場面でこういう思考になるんだな」と上から見るのです。
決して「完璧主義な自分はダメだ」と否定しないことです。
完璧主義が故に、他の人より仕事の精度が高かったり、成果が得やすかったり、人から信用されたりと必ずプラスの面があるからです。
まとめ
レジリエンスについて考えました。
いかがだったでしょうか。
個人的には状況は変えられない場合が多いので、Southwick&Charney(2012)の例を活用することが大事だなと思います。
さらには、個人的には「ユーモア」が重要だなと感じます。私的に1番実践しやすいからです。
なんでも笑いにかえられると、悩むのもバカバカしくなるかもしれませんし、視野が広がることで脱却方法が見つかるかもしれません。
ポジティブになれ!と言われると難しいかもですが、ユーモラスに考えよう!というのは出来そうな気がしました。
参考になれば幸いです!
参考文献:「職場のポジティブメンタルヘルス」島津明人編著(誠信書房)
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