D&Iが組織体に与える影響①/文献調べ25-39

これまでも、本ブログでは文献調べを通してD&Iの企業への影響についてみてきましたが、今回は「グローバルな視点と洞察 ダイバーシティとインクルージョンが組織体に与える影響の把握」と題された「内部監査人協会(IIA)」によって書かれた論文を見ていきます。内部監査の視点はこれまで扱っておらず、D&Iを扱わないことによるリスクの観点が学べるのでは、と思って選びました。

以下、抜書きしながら考察します。

(・は抜き書き箇所、その他は私のつぶやき)

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・ダイバーシティの欠如は、内部監査部門が認識するに値する他のリスクと同様に、組織的なリスク。
・ダイバーシティがどのように職場に影響し、生産性や組織体の価値に作用するかを明らかにする

目次

ダイバーシティとインクルージョンの関係

・両者を混同しないことが重要
・ダイバーシティとは、人間のあらゆる領域の違いを指す。インクルージョンとは、ギャラップ社の記事では、「文化的・環境的な帰属意識」を指す。
・心理学者のビル・クロフォード氏は、ダイバーシティとインクルージョンを次のように区別「ダイバーシティは、何であるかという状態の説明であり、インクルージョンは、効果的なチームや組織体に不可欠な交流方法の説明である」
・このような例があるが、ダイバーシティとインクルージョンの定義は、議論の文脈によっては食い違ったまま。
・「ダイバーシティ。プライマー」という本は、3つの指針を概説。
①中核となる人間の価値を尊重する。
②現地の伝統を尊重する。
③共通点を見つける。

D&Iと表現されることが一般的ですが、改めてそれぞれを「混同しない」ということが書かれています。
私の解釈としては、

ダイバーシティは状況、インクルージョンは状況がどう機能しているかの状態

という捉え方をしています。

ダイバーシティが組織体に与える影響

収益性の改善、人材の採用と定着率の改善、およびパフォーマンスの向上についても触れられていますが、今回は下記の項目について抜書きしてみます。

取締役会のパフォーマンス向上

・企業の健全性を示す指標として投資家の利用が増えている企業の社会的責任(CSR)と取締役会の性別のダイバーシティとの間に、統計的な有意な関係を認めた
・PwC社の米国上場企業への調査でも、ダイバーシティは取締役会に独特の視点をもたらしたり、パフォーマンスを向上させたりすると回答

ダイバーシティリスク

・内部監査は、利点だけではなく、(D&Iの)欠如が組織体の長期的な目標に対するリスクとなり得ることを、ステークホルダーに確信させる役割
・例えば、法的責任に曝されるリスク、商品やサービスへの悪影響。
・消費者はこれまで以上にダイバーシティとインクルージョンを気にかけている
・世界の消費者の55%は、社会に好影響を与える企業の製品やサービスに対してならば、より多くの支払いを厭わない。

所感

企業でD&Iを推進する際にトップのコミットは非常に大切ですが、担当者の方の声でよく聞くのは「それをやって、売上が上がるのか?」という実利的な問いを投げかけられるということです。

本論文でも、収益性や採用面でのメリットについて触れていますが、内部監査的な視点、つまりはリスクという面もおさえる必要があるなと感じています。

一方、障害者雇用では、雇用率未達成によるリスクは分かりやすく経営層に呈示できるものですが、逆にメリットの部分をどう解釈し、どう伝えるかを苦慮する担当者さんもいらっしゃいます。さらに、社内理解となると、「マイノリティへの無意識的な抑圧」や「マジョリティ側の特権」といった壁もあります。引き続き、考えていきたいです。

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