ASDの特徴的な行動について/文献調べ24-19

自閉症スペクトル 親と専門家のためのガイドブック ローナ・ウイング著
以前ご紹介した、ポリヴェーガル理論の書籍にて、参考文献として紹介されていた本書をご紹介。
特に重要だと思った部分を抜書きしつつ、所感を述べていきます。
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社会的相互交渉の障害

Ⅰ 孤立群
・小さい子供たちに一番多いタイプの社会性の障害。
・他人が存在しないかのように振る舞う。
・手の届かないものが欲しいとき、相手の手の甲や腕を掴んで目的物にもっていったりドアの取っ手を回させたりする。

Ⅱ 受動群
・社会性の障害のタイプで最も数が少ないグループ。
・まったく孤立しているわけではない
・青年期に際立った変化が起こって行動に異常が現れる人もいる。

Ⅲ 「積極・奇異」群
・他人に活発に近づこうとする
・話し相手の感情やニーズに全く注意を払わない
・アイコンタクトが長すぎたり強すぎたりする

Ⅳ 「形式ばった大仰な」群
・過度に礼儀正しく堅苦しく振る舞う
・うまく振る舞うために非常な努力をし、人付き合いのルールに厳格にこだわって対処しようとする
・ルールを本当には理解していないので、時間の経過や状況の変化に応じて取るべき行動の微妙なちがいに対応することには、独特の困難さを伴う

コミュニケーションの障害

Ⅰ 話し言葉を使うこと
・意味のないオウムのような模倣「エコラリア(反響言語)」
・かつて聞いたことのある単語や言葉遣いを繰り返す「遅延のエコラリア」

Ⅱ 話し言葉を理解すること
・状況の手がかりを掴むために相手をじっと見る
・文の中の1、2語にのみ反応し、その他を無視してしまう傾向
・大きな特徴は、文字通りの解釈をすること。「ティーポットの内側ではなく、外を拭いて」と言われ。ティーポットを持って外に行き、拭いて乾かす。

Ⅲ 口調と声量調整
・不自然な口調で話し、単調だったり変な抑揚があったりする
・話す時に声量の調整がむずかしく、大きすぎたり、小さすぎたりする

Ⅳ 非言語コミュニケーションを使うこと、理解すること
・代替のコミュニケーションを適切に使用することができない
・時が経てば、明確で単純なジェスチャーや表情の意味がいくらかわかるようになっていく。

想像力の障害
・ごっこ遊びや創造的な活動が発達しない
・他人の感情の理解が限られるか、全くない
・喜びや悲しみを分かち合うことは困難
・楽しみを自分の特異な興味のなかに見いだす

反復した常同的動作
・想像力の障害とはコインの裏面
・何らかの楽しみをもたらす動作を反復して安心する

Ⅰ 単純な反復的動作
Ⅱ 手の込んだ反復的なルーチン

基本的な生活スキルを教えること

①褒美をもらえる行動は、褒美をもらえない行動よりも繰り返される
②褒美を与えるタイミングが重要
③細かく簡単なステップに分ければより学びやすくなる
④ある種の課題では、うまくやり遂げたことに気づくよう、一番最後の段階から始める。「逆からの鎖つなぎ」
⑤プロンプトがもはや必要無くなるまで、子供がその課題を学ぶにつれ徐々に目立たなくしていく
⑥最初はごく短時間。時間を少しずつ長くしていく
⑦繰り返す行動を利用する。

青年期や成人期になっても自立できない場合

仕事
・できる仕事は、個々の能力や興味そして注意の持続力に合っていて、日々の時間割が構造化され目に見えるかたちではっきりと示されている。訓練を受けたスタッフによって適切な援助と監督が受けられるような仕事。
・落ち着いていて静かなところ。個人スペースが確保されていることが必要。

家庭から離れていること
・色々な人に出会い、新しい経験をする機会を得る
・より広い範囲の余暇活動に参加することができる

能力の高い成人の場合

就職
・特殊なスキルを発揮し、楽しみを得られる適切な就業は、自尊心を高め、問題行動を最小限に抑える最良の方法
・好意的で理解のある雇用主と寛容な同僚が成功には不可欠の要素
・指示が複雑であったり、やり方がしばしば変わったりする仕事には適応しにくい
・騒音や明るい光に対していつも敏感
・仕事を始めるにはあたっては、誰かがあらゆる細かいことを丁寧に説明する必要がある
・誠実で勤勉な傾向がマイナスに作用することもある。完璧で正確な仕事をしようと努力するために職場では容認されないほど生産性が低下するから
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○一言所感
「三つ組の障害」という表現も出てきて、時代の流れを感じました。
サブタイトルの通り、親と専門家のためのガイドブックであり、子供の頃の特徴的な行動やそれに対する支援についても中心的に述べられていました。
スキル習得ついて書かれた章では、プロンプトーフェイディング(支援を徐々に減らしていき、最後は一人でできるようにする)の考え方も紹介さており、自閉スペクトラムにおいて「成功体験」を積ませることの大切さを改めて学びました。
常同行動はASDの人が想像力が乏しい分、安心感を求めての行動だといった背景を理解する重要性を述べた部分は、学校や職場での関わりにおいてとても大切ですよね。

改めて非常に勉強になりました。ありがとうございました。

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