【コラム】サポーティブな職場づくりに向けて 〜共感性と向社会的行動に注目して〜 Vol.1

受け入れ部門の拡充や支援体制の整備を進める中で、
「どうすれば、もっとサポーティブな職場になるだろう?」
と感じたことはありませんか?

これは人事の方だけでなく、現場のマネージャーやリーダーの方にも共通するテーマだと思います。

今回は、そのヒントになるかもしれない「向社会的行動」を取り上げてみます。

——
向社会的行動とは、「他者の利益を意図した自発的な行動」(Batson, 1998; Eisenberg, Fabes, & Spinrad, 2006)とされるもので、簡単にいうと「思いやり行動」のことです。

思いやりを受けた人には、感謝感情と言われるポジティブな感情が生まれますし、行った側にも「なんか、いいことしたな」という余韻が残ります。

こうした思いやり行動が自然に交わされる職場では、
障害のある方が「理解されている」「受け入れられている」と感じやすくなりますし、共に働く仲間との一体感や信頼関係も深まっていくはずです。

ではどうすれば、思いやり行動が自然と生まれるようになるのでしょうか?

これまで明らかになっているのは、「共感」や「感謝の表明」、「ちょっとした声かけ」などが、思いやり行動につながるということです。

その中でもここでは「共感」を、そして障害のある人が活躍されている「現場」に焦点を当ててみたいと思います。

現場での「向社会的行動」を促進する要因として、共感性があります。

共感性とは、「他者の経験にふれたときに、自分の中に生まれる気持ちや反応」のことです(Davis, 1994の定義をかみくだいています)。

これまで「共感」についての研究は、ネガティブな感情への共感(他者の辛かったこと・困っていることに対する共感)が中心でした。
「向社会的行動」についても、ネガティブな体験との関連、例えば「困っているから助けてあげよう」といったことが中心テーマです。

それが最近では、ポジティブな感情への共感(他者の成功体験や嬉しかったことへの共感)の研究も進んできているようです。ポジティブな感情への共感は、向社会的行動を促進する上に、他者に対する攻撃行動(仲間はずれ・陰口なども含む)を抑制することもわかってきました。(櫻井ほか,2011)

障害者雇用の現場で考えてみます。

障害者本人の困りごとの共有を図りながら、どんな支援が必要かを検討するの重要性は、理解が進んできているところです。加えて今後は、「ポジティブな体験の共有」というのも大切になってくる、と言えると思います。

例えば、障害がありながらも乗り越えられた体験、頑張れた体験、分かったこと・気づいたこと・思ったこと、そういった「ポジティブな体験の共有」を、受け入れ前後に職場で共有することが、「サポーティブな職場づくり」に繋がっていくと思うのです。
(きっと選考段階では「これまで努力した体験」は聞くと思います。…でも、選考が進むにつれて、「どんな配慮が必要か」ばかりに目がいってしまい、ポジティブなエピソードは忘れられがちな気もしています)

また、別の研究では「ポジティブ感情への共感」は、主観的幸福感を高めることもわかりました(小國・大竹,2017)。他者の前向きな感情への共感は、自分の幸せにもつながるということでしょう。

一方で、お気づきかもしれませんが、「共感しやすい人」「共感しにくい人」がいるのも事実です。

「共感しにくい人」にはどう届けるのがいいのか。「サポーティブな職場づくり」に向けてもう少し考える必要がありそうです。

おっと、長くなったので、また次回にしませう。

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