ダイバーシティ&インクルージョン施策と障害者雇用施策の共通点/文献調べ25-14

日本企業の障害者雇用施策とダイバーシティ&インクルージョン施策の共通性に関する考察 -女性、LGBTおよびがん患者の就労支援施策との比較から-」 山田雅穂(2020)を抜書きしながら、D&I施策、特に女性活躍とLGBT、そして近年対応への必要性が高まっているがん罹患社員の就労継続施策と、障害者雇用施策の共通点を考察していきます。

目次

目的

経営倫理とCSRの観点から、企業の障害者雇用施策と女性、LGBTとがん患者の各施策を比較し、その共通性を整理しているものです。

本文では、ダイバーシティの議論において障害者が積極的に語られない2つの理由(山田,2014)について語られており、それは

①障害への配慮を行えば障害者も十分な戦力になり、かつ企業全体に積極的な効果をもたらす事実を多くの企業や社会全体が理解できていない点。
②従来のダイバーシティの議論に「経営倫理」の視点が入っていないため。

とされています。

経営倫理との関係

本論文における「経営倫理」とは水谷(2003)が提唱した「経営価値四原理システム」を参照しています。
これは

「効率性原理」と「競争性原理」の二原理中心による利益の極大化を最重要な価値ある考え方とする企業価値観に対して、「人間性原理」と「社会性原理」をそれらと対等の価値として加えた

ものとしています。

この前提をもって「障害者をダイバーシティとして活かすための経営倫理」について触れており、

・人間性原理と社会性原理を同等の経営価値とする経営倫理の考え方に大きな意義があるといえる
・ダイバーシティとして障害を活かすには、障害への配慮によって障害者の特性と多様性を強みとし、生かすという積極的な視点が不可欠
・強みを引き出すプロセス、最終的には障害のない人と多様な形で共に働けるような方策を導き出すことが、「障害の視点をも入れたダイバーシティ・マネジメント」である

としています。

D&Iの各施策と障害者雇用との共通点については以下の通りにまとめられています。

女性活躍推進の共通点

・経営倫理の概念を基盤に、CSRとして実践することが求められている点
・ポジティブ・アクションという政策手法があること
・すべてのプロセスで、個別のニーズに応じた配慮が不可欠であり、さらにその配慮(合理的配慮)が両者の戦力化を可能にする点

LGBTの共通点

・求職時から雇用後に至る全てのプロセスにおいて、ニーズに応じた配慮が不可欠であること
・積極的に経営戦略に結びつけて実践することが必要なこと

がん患者の就労支援のポイントとの共通点

・がん罹患社員の最大の就労阻害要因は、がん関連疲労(遠藤,2019)
・就労継続性と企業の就労支援において「事例性と疾病性に分けた対応」と「利害関係の調整」が不可欠
・これらは「合理的配慮」と同様。各障害者のニーズを個別具体の文脈で充足するための調整措置で、相手側に過重な負担を課さないもの

と示されています

まとめと感想

以前、「事例性と疾病性」についてブログで書きました。

がん罹患者の支援においても共通する内容でした。

以前、ある会社の障害者雇用担当者の方が「会社の人格、つまり”法人格”を高めるには、『理念に掲げたことをちゃんとやる』こと」とおっしゃっていました。

「言ったことを守る」「約束を守る」人が信頼を得るように、法人も経営に対する倫理観(「経営価値四原理システム」の「人間性原理」「社会性原理」)を高くもつことで、社会から信頼され、そういった企業の提供する商品・サービスの価値向上にもリンクするんだろうなと思いました。

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