障害者雇用と労働生産性に関する考察 ~影山摩子弥先生の論文をもとに~/文献調べ 24−32

(※本記事は2024年11月29日に更新されました)

横浜市立大学の影山摩子弥先生の論文から、表題に関して学ばせてもらいました。
影山先生の論文は、企業における障害理解、特に「生産性」という最も重きが置かれがちな視点において、さまざまな示唆を与えてくれます。また、我々のような支援者、支援企業にとっても勇気をもらえる内容ですので、大好きですw

本記事では、この論文を通じて得た知見を共有しながら、企業が考えるべき視点を探ります。

目次

障害者と労働生産性の関係

影山先生の研究(※調査対象として17社(大企業4社、中小企業13社)の健常者社員(経営層含む)を対象のアンケート、会社データ)では、障害者の労働生産性は「ミクロ」と「マクロ」の視点で考えるべきだと提言されています。

組織内ミクロ労働生産性

障害者個人の能力評価
一部では「生産性が低い」と見られる場合があります。

組織内マクロ労働生産性

社員同士が生産性に関して相互に与える影響に着目した考え方。
相乗効果に着目したシステム論的概念、「つながりの効果」を示す現代的概念と言われます。

接触度の高さで認識された障害者の能力

影山先生の調査では、企業内外での「障害者との接触度」が重要であることが明らかになりました。
同様に、生川(2007)も「接触度が高まると能力を肯定する度合いも高まる」との分析結果を導いています。

  • プライベートな接触: 深い接触があるほど、障害者の能力が肯定的に認識されやすい。
  • 社内接触: 社内での障害者との接触により、
    「同等性」(障害者は、健常者社員と同等であるという認識)
    「経営への貢献」(障害者雇用は、自社に対する顧客の評価を高める)
    「障害者パフォーマンス」
    が向上する。
  • 相乗効果: 両者の接触を組み合わせることで、能力認識がさらに向上する。

これらの結果から、企業がインクルーシブな職場を実現するには、計画的に「接触機会」を設けることが有効であると考えられます。

プライベートの接触
社内接触
どちらも

障害者雇用の経営的効果

影山先生の論文は、障害者雇用が経営に与える具体的な効果も示しています。

  • 精神健康度と職務満足度の向上
    「障害者のパフォーマンス」が認識されることで、健常者社員の精神健康度が改善され、職務満足度が向上します。
  • 業績への貢献
    職務満足度が高まると、業績向上につながる傾向があると報告されています。

組織設計とシナジー効果

「組織内マクロ労働生産性」を高めるには、シナジー効果を意識した組織設計が必要です。

一部の企業では、障害者を専門部署に配置し、清掃や設備管理など他部署を支援する形で成果を上げています。こうした事例は、障害者雇用の成功モデルとして注目されています。

まとめ

障害者雇用の取り組みには、法定雇用率の達成だけでなく、「接触機会の増加」や「マクロ的な生産性向上」に向けた組織設計が求められます。

影山先生の論文は、障害者が持つ潜在能力を引き出す具体的な方法を示唆しており、今後の障害者雇用に携わる企業にとって重要な指針となると考えます。

※影山先生の論文では「障がい者」と表記がありましたが、本記事では「障害者」に統一して記載させて頂きました。


参考
影山摩子弥(横浜市立大学)「障がい者雇用における労働生産性と接触の影響」(2012)


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