障害者雇用における組織社会化/文献調べ 24-23
日本社会福祉学会で発表された「障害者雇用における組織社会化をめぐる検討」(根本,2019)の内容が興味深いのでご紹介します。
以下、レポートの内容を抜書きさせていただきます。
===
・企業で働く知的障害者の組織社会化(Organizational socialization)に着目
(研究目的)知的障害者の就業継続を実現するための組織社会化適応モデルを提示すること
・組織社会化は「個人が組織の役割を引き受けるのに必要な社会的知識や技術を習得し、組織の成員となっていく過程」(Van Maanen & Schein,1979)
①個人の役割・職務の明確化②業務内容についての理解による生産性向上③業務の適切な時間配分④自己効力・自信の獲得⑤成員性の獲得⑥離転職の防止など(Ashforth,2012) 雇用を継続して上での効果をもたらす概念
・短期的成果として①仕事の習熟②役割の明確化③職場への統合④政治的知識
・長期的成果として①組織コミットメント②仕事へのネガティブな態度の軽減③離職意思の軽減(Kammeyer-Mueller & Wanberg,2003)
(研究方法)特例子会社や一般企業の職場管理者を対象に半構造化面接法によるインタビュー。データ分析。
(研究結果)
▷初期における組織社会化:職場管理者は(中略)再評価と再解釈を重ね合わせて、職場に適したノウハウを見出していく。
職場に適した支援の方法を見出すプロセスが初期段階にあることが、就業継続の一因。
▷発達期における組織社会化:職場管理者は障害者雇用における「知覚された環境の重要性」として、時間の経過と共に変化する障害者の就業生活に対応できるよう一般従業員による研修参加を促し、研鑽を積む経験を増やす。初期段階よりも【柔軟性のある思考パターン】を組織内で見出す
▷発達期における組織社会化:これまでの文化的経験と「相互援助システム」といったコミュニティの経験を、他部署の従業員にも共有を図る<インクルーシブへの接近>行動
(考察)
・組織の力量(competence)は、生来の能力や個人的な特徴というよりも、人と環境の相互作用の機能として生じることが示せた。
・生態学的な力量には、環境あるいは生活空間における効果的な行動を求められる複合的な技能が含まれるとされ(Maluccio,1980)、本研究の分析においても同様の結果が見出せた。
○感想
知的障害者の職場定着率は他の障害種と比較するとやや高いことから、ややもすると「自動的な社会化」と誤解する向きもあるかもしれません。職場管理者による障害者、従業員双方への現場マネジメントにより、組織社会化が促される(人と環境との相互作用)ということは、知的障害者が組織への適応における大前提として理解しておかねばなと思いました。また、発達期における不協和音ともいえる職場の混乱は、現場において必ず起こる現象として、いかに柔軟な対応を心がけておくかも大切な管理方法だなと思いました。
コメント