障害者雇用は競争優位となり得るのか②/文献調べ25-33

前回に引き続き、Harvard Business Review の記事「“Disability as a Source of Competitive Advantage”(2023年7-8月号),Luisa Alemany,Freek Vermeulen」を抜書きしながら、「障害者雇用は企業にどんな力を与えるのか?」について考えていきましょう。

③顧客との関係強化

”顧客は商品の中身や機能だけを評価するのではなく、その商品がどのように作られ、誰が作っているかも評価する”とあります。

・企業が障害者を雇用していた場合、顧客は、それらの企業と「共同的関係」(コミュナル・リレーションシップ)を持つ
・自分が好きな企業やコミュナル・リレーションシップを感じる企業に対して、人々の支出を増やそうとする意欲が高い。

とあります。障害者雇用をしている企業に対して、顧客の側から歩み寄ってくれるという意味とも捉えられます。企業は生存競争の中で、主体的に顧客との関係性を築こうとしますが、障害者雇用を起点として受動的な関係構築の可能性がありえるということでしょうか。

もう少し読み進むと、とこうあります。

・ある企業が単に障害者を雇っているからといって、顧客はその企業の特定の製品やサービスの購入金額を増やそうとはしない(単純な因果関係はない)。しかし、顧客がその企業と心理的なつながりを感じれば、進んで購入金額を増やそうとする。企業が障害者を雇用しているとわかると形成されやすくなる。
・障害者を雇用することは、企業の価値提案に新たな側面を加え、それが競合企業の多い市場での差別化要因となる。

読み解くと、障害者雇用をしていることで、より「公正」で「責任」ある企業とみなし、その企業の製品・サービス購入への動機づけが高まる、というロジックということだと思います。

④資本と人材へのアクセス拡大

資金調達と人材獲得の確度を高めるという意味だと思いますが、

・ESG関連の運用資産総額は2022年に過去最高となり、2025年には50兆ドルに届くと見られる。
・障害者を雇用することで、こうした投資家にとって企業の魅力が増す
・障がい者は、企業にとって未開拓の人材の源泉でもある。
・企業が持つ偏見によって、障害者の採用が阻まれている。これは裏を返せば、見識ある企業にとって、非常にスキルの高い人材を容易に獲得できるということである。
・加えて、障害者を採用すると、障害のない人にとっても魅力的な企業として映る可能性が高くなる。実験によってわかったのは、従業員のかなりの割合に障害がある場合、就職活動中の人たちがその会社を気に入る。
・「業績を上げたい」という願いは、障害者を雇うのに十分な理由となることだけは間違いない。

とあります。

ESG関連の運用資産総額は、この記事の書かれた2022年頃とは状況が変化しており、”2025年には50兆ドルに届くと見られる”というのは残念ながら相違ある現実ではあります。

一方で、人材獲得にはプラスのインパクトが働く傾向があるというのは、日本においても当てはまるのではないかと(肌感覚ながら)感じております。

学校教育においてもSDGsが扱われるようになって久しいですが、環境にも人にも配慮した企業が「いい企業」と若者に目に映るはずだろうなと感じています。

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