障害者雇用は競争優位となり得るのか①/文献調べ25-32

「障害者雇用は社会貢献の一環」──そう捉える企業は多いと思います。
けれども近年は、それだけではなく 経営上の競争優位を生み出す“戦略的な資源” として注目されつつあります。

Harvard Business Review の記事「“Disability as a Source of Competitive Advantage”(2023年7-8月号),Luisa Alemany,Freek Vermeulen」では、障害者雇用が企業にもたらす具体的なメリットを整理し、競争優位につながる4つの観点を示しています。

今回はその内容を抜書きしながら、実際の事例を交えて「障害者雇用は企業にどんな力を与えるのか?」を考えてみたいと思います。

目次

明らかになっていること

いきなり結論から入りますが、当記事においては、”障害のある従業員を雇用すると、次の4つの点から競争優位性を築けることがわかっている”と示されています。

その4つとは

①障がい者は独自の能力を有していることが多く、特定の業務でその力を発揮できる
②障害者が職場にいることで、組織全体の文化が向上し、相互に協力的になって生産性も高まる
③インクルーシブ(包摂的)な企業であるという外部評価によって、顧客に対する価値提案が強化され、顧客とより長期的な関係を築ける。
④社会的責任感を持つ企業であると認識されることから、資本や人材の獲得において優位に立てる

です。1つずつみていきましょう

①特別な能力の獲得

記事には
・障害者には、特徴的、あるいは特異な能力がよくある。
・自閉症の研究者、なかでもケンブリッジ大学教授のサイモン・バロン=コーエンは、細部への注意が必要な業務の適性と自閉症との間に、強い関連性があることを発見した
とあります。

具体的な例として、下記を挙げています。
・近年では大手企業が、品質管理やサイバーセキュリティ、コーディングチェックといった特定の業務に、ニューロダイバーシティな従業員を雇っている。
・モールのゼネラルマネージャーによると、身体障害のある従業員は、顧客の感情を鎮めるのがうまいようだ。
・セキュリタスは障害者を警備員として採用している。車椅子で移動する警備員は、特にスリを見つけるのがうまいという。彼らは人のポケットの高さの動きがよく見えるからだ。
・民間健康保険会社のDKVは、障がい者だけを同社のDKインテグラリア・コールセンターで雇用している。ゼネラルマネジャーによると、障害のある従業員は「他者への共感のレベルが非常に高く、まるで自分の家族を助けるかのように問題を解決しようとする」

発達障害の高い集中力やこだわり、知的障害のルーチンワークへの向き合い方などはよく聞く話だと思いますが、車椅子移動する警備員というのは「なるほどなあ」と、目から鱗な感覚です。

②企業文化の向上

・多くの企業で一貫して聞いたのは、障害者と一緒に働くことで、より協力し合う文化が醸成されるということである。
・組織の連帯感を育むうえでの課題として、人には立場や評価を求めて競い合う傾向があり、企業はそれを乗り越えていく必要がある。障害者を雇用すると、そうした傾向を緩和できる。彼らは特定の事柄においてサポートや援助を必要とするかもしれないが、従業員は彼らと働くことで、協力し合う習慣や態度を身につけていくのだ。

「スペイン援助付き雇用連盟(AESE)」と共同調査で分かったこととして、
▷障害のある従業員を雇って以来「心理的安全性が高まった」と答えた人が全体の65%
▷チームがより協力し合って働くようになったが、74%
▷組織内全体の雰囲気が改善されたが、75%
▷「即座にチームの団結力が強まり、協力し合うことで新たな日常となった」「知的障害者が入社して以来、みんなが以前よりも思いやりのある行動をするようになった」

また別の調査では、障害者と一緒に働く人たちが他社の限界を受け入れられるようになったようです。

続きは次回。



よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次