障害者雇用におけるイノベーションを考える①/文献調べ25-44

「障害から始まるイノベーション」田中真理・横田晋務(2023,北王路書房)という、とても惹かれるタイトルの書籍から、障害者雇用のおける「攻めの価値」ともいうべきイノベーションについて考えてみます。

今回は、1章「障害の社会モデル」にある、「インクルーシブキャンパス」を抜書きです。
(・箇所は抜書き。それ以外は私の所感)

○インクルーシブキャンパス

高等教育機関における、合理的配慮を含めた教育制度や環境整備については、以下のように記されています。

・インクルーシブキャンパスの体制構築に向けては、キャンパスという一つのコミュニティ社会を網羅する視点が不可欠。社会的障壁を低減するために周囲の環境全体を変える「社会モデル」が重要。

社会的障壁は、以下の3つに整理
①空間
・多様性存在の基盤。心身機能や脳の多様性を示す人々が安心して「場」を共有できる空間のバリア低減が必要
・次世代社会はリアル空間とバーチャル空間が融合する社会。神経多様性のための空間として、その重要性が指摘(Sarett,2018)
・安心・安全に他者と「つながる」ための空間を探るにはバーチャル空間との融合が求められる

②制度
・合理的配慮内容の公平性を担保する科学的根拠が求められる。
・根拠提示は、周囲の者の障害学生に対する暗黙の前提を問い直し、障害学生に潜在している個性や能力を新たな視点から評価・認識し直すチャンスを与える可能性にも繋がる

③心理
・周囲の障害観・人間観・行動様式に関する心理的バリアの低減を図る必要
・「障害学生との共学はすべての学生の学びを豊かにする」という大学コミュニティ全体の視点が重要

○障害は多くの人のニーズを先取りする

・学び方改革・働き方改革が言われる以前に、障がい者の視点からのニーズという形で時代を先取りしていた
・障がい者のニーズは、既成概念にとらわれない発想をもたらし、そのニーズ解決のためにさまざまな技術を組み合わせることで、飛躍的なアクセシビリティの向上を可能にしている

個人的には制度における「根拠提示」について、2つの視点から重要性を感じています。
1つは、著者が示すような「障害学生の潜在的な個性や能力の評価」ですが、もう1つは「非障害学生の能力発揮の機会」という側面です。本著のサブタイトル「ニーズをシーズに捉え直す障害学入門」にも当てはまりそうですが、制度の変更は多数派にとっては脅威に感じられる場合もあります。そこで、制度変更が「誰にとってもいい制度」になり得るとした科学的根拠が示せると、当然に受け入れやすくなるはずです。

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