障害者の同僚等に関する先行研究/文献調べ 24−26

「障害等により配慮が必要な従業員の 上司・同僚の意識に関する研究」(障害者職業総合センター,2022)から、職場や同僚の課題についての調査の紹介と所感を述べます。

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・職場における障害者の受け入れ、障害者の雇用継続における同僚等の影響、障害者の同僚等が抱える困難感に関する研究のレビュー

目次

○職場における受容

・仕事を持つことは、社会的な孤立感を軽減する機会の1つ(Hall & Las Heras, 2010)
・同僚に受け入れられることが、社会的な孤立を軽減するための不可欠な要素(Vornholt, Utidewilligen & Nijhuis, 2013)
・同僚から受け入れられることは、障害者の持続可能な雇用にとっても重要である可能性が高い(Vornholt, et al., 2013)

○職場への社会的統合と介入プログラム

・介入プログラムの成功事例と失敗事例の比較研究(Chadsey ら,1999)では、介入に成功する要因として「職場の特徴」と「介入の手段」がある。

「職場の特徴」
▷成功した職場の特徴:雇用されている障がい者が多く、同僚と障がい者が頻繁に同じ時間に出社し、同じ種類の仕事を行なっている環境、上司との交流が仕事以外でもあり、従業員が年に数回仕事以外でも顔をあわせる機会がある。
▷成功しなかった職場の特徴:従業員が上司との交流がほとんどない職場。

「介入の手段」
▷成功した職場:1つの介入を2回以上行ったケースがない。
▷成功しなかった職場:就労支援スペシャリストが障害者を人気のある、もしくは評価の高い同僚にもっと関わらせようとして同僚を巻き込もうとしたケース。同僚や上司が介入する際に、障害者の擁護者として役割を求められたケース。

Chadsey らの仮説
・同僚と障害者が交流する機会が必要
・同僚と障害者が同じ時間、同じ仕事をしている状態が職場文化として、同僚から認識される可能性が高くなる。
・同僚は障害者に対して挨拶するだけでもその役割を果たすことができる。

・雇用環境における社会的統合にグループ間接触理論の応用研究(Novak & Rogan,2010)では、同僚と障害者の接触条件が社会的統語の結果を予測するのに重要な役割があると述べる。
(グループ間接触理論は、Allport(1954)が提唱した理論「偏見は相手に対する知識の欠如が大きな原因であると考えられることから、相手と接触する機会を増やし、真の情報に触れれば、偏見はおのずと解消する」という考え方(池上, 2014))

第1条件:障がい者が、同僚と交流する機会(交流機会の多さ)
第2条件:障がい者と同僚の間の地位の違い(指揮系統、職責、報酬の同等さ)
第3条件:同僚が障害者に仕事を頼っているか(障害者の働きに結果を求めている)
第4条件:職場環境の平等性、寛容性、受容性(上司の障害者に対する態度)
第5条件:社会的・行動的規範が作用する職場文化(職場の雰囲気、従業員の積極的な友好さ)
さらに重要なこととして
1 同僚と物理的に近い場所で仕事
2 食事の時間を含めて同僚との自然な交流の機会の確保

※社会的統合(Social integration)=障がい者が新たに従業員として職場社会に組み込まれるプロセス
※介入プログラム(Intervention program)=支援者による障害者の社会的統合を目的とした行為の総称
(障害者に対する語りかけ、職場環境に対する改善勧告など)

○障害者が受けている配慮への反応

・障害者への配慮によって生じる不公平感は、配慮によって同僚自身の報酬や成果が奪われること で生じる不公平感。
・障害者が同僚の仕事のグループに組み込まれているほど、同僚は配慮を正当なものとみなすという見方もある。
・障害者に対して共感を覚えると、 障害者への支援が増える(Colella et al., 2001)

○同僚等が抱える困難感

・特例子会社において、一般従業員が感じている困難感を調査(上村,2013)によると、職場生活指導に困難感が多く挙げられ、種類別だと「職場内支援の困難感」「生活支援の困難感」「コミュニケーション支援・対人関係支援」だった

(例)
▷職場内支援の困難感:思い通りにならないと威嚇してくる。注意するとストレスで二次障害のおそれがあるなどの「注意をする難しさ」
▷生活支援の困難感:企業として生活に関わる問題を無視できない、など、障害者の「生活の見えにくさ」
▷コミュニケーション支援・対人関係支援:「何をしたいのか、どうしてほしいのか」「返事をするが分かってもらえない」という「コミュニケーションの難しさ」
▷その他として:指導方法やチームの指向性といった価値観を揃えることの困難さである「他の職員と考え方を揃える難しさ」や、立場や考え方の違うスタッフ同士におけるコミュニケーションや、どこまで個別の支援に入り込むかという「役割の迷い」

○所感

受け入れ職場の拡大に向けた社内スタディーとして、とても参考になると感じました。上司の障害者に対する態度や姿勢などが同僚と障害者との関係性に影響するのは感覚的には理解できるものですが、否定的な上司の行動や思考を肯定的なもの変えるのはなかなかに難しいと感じます。一方で「挨拶」だけでも職場にはプラスになるというのは取り組みやすさと効果の大きさという点で、上司や同僚に対しても腹落ちしやすいものだなと思いました。

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