文献調べ 24-2
障害者雇用に関する文献から、気づいたこと、重要だとおもったことを抜き書きしています。
働く障害者の職業上の希望実現度と職務満足度が離職意図に及ぼす効果(若林,2007)
・職場適応を考える上で理論的な枠組みとなる「ミネソタ職業適応理論」を参考に、障害者の職業上の希望実現度、職務満足度と離職意図の関係についての検討
※「職業上の希望実現度」→「就職時の希望実現度」と「働く上で必要な配慮実現度」の総称とする。
○これまでの障害者の職場定着・離職に関する研究
・西口らは、職場定着を妨げる要因について、事業所の人事担当者を調査
_「職場環境の問題」「啓蒙不足」「障害者の体力能力不足」「コミュニケーション不足」などの要因を抽出。
・清水らは、知的障害養護学校卒業生の離職理由を分類
_「本人の問題行動」「対人関係の悪化」を報告
・田中らは、自己都合で退職した知的障害者の離職要因
_「自己への甘え」「欠勤の連続」を報告
・梅永らは、事業主・離職した知的障害者双方から離職理由を聴取し、差異があることを報告。
・これら報告の多くは、職場側の要求水準を障害者側が満たしていないために離職したといった観点が中心。
○働く障害者の職務満足度に関する研究
・これまで職務満足度を従属変数とし、いくつかの独立変数との関連が調べられてきた。
・橋本は、熱心に管理を行なっている上司のもとでの身体障害者の職務満足度は基本的に高いことを見出す。
・さらに橋本は、管理スタイル(人間性への関心:Hと、生産性への関心:P)のいずれも高いことが、障害者のこう満足度と関連していると報告
○ミネソタ職業適応理論
・米国のLofquistとDawisによって提唱された理論。
・ある個人のある時点におけるある職業(職場)に対する適応の状態を、働く人間と環境の相互作用から説明する理論。
・1960年代に身体障害者の職業リハビリテーション場面をもとにつくられたもの。
・想定されている職業適応モデルは図1のとおり
内容として
・労働者本人のニーズ・価値観と、環境側が提供する強化因子の関係により、職務満足度は変わる。
・労働者個人の技能・能力と環境側の職務上の要求水準の関係により職務充実度は変わる。
・職務充実度と職務満足度が双方高いと「良い適応」である。
・職務満足度が高いとその職に留まるが、低いと離職する。
・職務充実度により、昇進したり解雇されたりする。
○本研究のリサーチクエスチョン
①職務満足度は、ミネソタ職業適応理論の想定どおり離職意図と関係があるのか
②職務満足度の下位構成要素(「労働条件」や「同僚との関係」等に関する満足度)と離職意図の関係は障害種類によって違いがあるか
③職務満足度に影響を及ぼすと考えられる職業上の希望実現度(就職時の希望条件の実現程度及び事業所に対し希望する配慮事項の実現程度)は、直接離職意図に影響を与えているのか、それとも職務満足度が媒介変数として機能し、離職意図の強さと関係しているのか
○方法
・全国103社に勤務する障害者680人対象に調査。・詳細省略
○結果
▷障害種類による職務満足どの離職意図へ及ぼす影響の違い
・全回答者によると「仕事の達成感」「労働条件」が離職意図の強さと優位に関係。
・肢体不自由では離職意図の強さに影響な大きな項目は「仕事の達成感」「同僚」
・内部障害では「労働条件」
・知的障害では「上司」
▷就職時の希望条件非実現度、働く上で必要な配慮非実現度、職務満足度、離職意図の関連
・就職時の希望条件の非実現程度や事業所に対し希望する配慮事項の非実現程度が高いことが直接離職意図を高めるのではなく、職務満足度という働く障害者本人の感じ方・受け止め方を媒介し、離職意図が強くなっていることが示された。
○まとめ
①職務満足度は離職意図と関連している。
②職務満足度と離職意図の関連の程度は障害種類により異なっている。(内部障害では関連が強く、知的障害では関連は相対的にあまり強くない)
③「仕事の達成感」「労働条件」等職務満足度を構成する下位要素のうち、離職意図との関連が強いのはどの要素か、については障害種類によって異なっている。
④就職時の希望条件が実現していないことや希望する配慮を実現していないことが、直接的に離職意図に影響しているのではなく、職務満足度を媒介し影響を与えている。
○一言感想
本ブログでは詳細を省いていますが、本研究の示唆として職場に対する受け止め方の「リフレーミング」が例示されています。
人はそれぞれの思考の枠組みで物事捉えますが、その枠組み(フレーム)を再構築するように介入することは、物事の違った側面に気づかせる意味でも意義あるものです。
障害者本人の主観を把握し、必要であれば支援するという態度が職務満足には含まれているのでしょうから、物理的な環境を充実されておしまい!というわけはないことを、改めて考える必要があります。
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