対人援助のためのコミュニケーション学①/文献調べ24-28

「対人援助のためのコミュニケーション学 実践を通じた学際的アプローチ」(伊藤・工藤・石田,2019)から、「知的障害児への支援とコミュニケーション」の章で気になった部分を抜き書きし、所感を記します。

目次

知的障害の理解と支援

知的障害の理解と基本理念

・障害という語について調べると「個人的な原因や、社会的な環境により、心や身体上の機能が十分に働かず、活動に制限があること」とある(松村,2012)
・障害ある人の支援には、その人の障害に関する正しい知識と適切な支援とともに周囲の環境を整備して、一人ひとりの日常生活と社会生活における制限や困難に対して、個別の支援を行う必要がある。

知的障害とは

・定義として「知的機能障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にあるもの」(厚労省、H17知的障害児基礎調査)
・知的障害とは、生まれてからの知的機能の障害があり、日常生活・社会生活の継続的な支援を必要となる状態と考えることができる(厚生労働省,2017)
・知的障害児の発達支援に関して、幼稚園などの保育・教育現場における日常生活や社会生活の場面で、周囲の大人や仲間とのコミュニケーションを支援することは重要と考えることができる。

知的障害児のコミュニケーション障害

知的障害によるコミュニケーションの困難

・DSM-5では、知的能力障害(Intellectual Disability)と表している(American Psychiatric Association,2013)

・一人ひとりの知的な能力やコミュニケーションの能力の実態を把握し、その現状に即した個別の支援を行うことが重要となる。

知的障害児への支援とコミュニケーションの実践

人間のコミュニケーションの概要

・話ことば、きこえ、言語による音声コミュニケーションに関わる身体領域は重要であることに加えて、身振りなどの身体動作も関係しており、人間のコミュニケーションは総合的な活動である

・コミュニケーション支援を担う指導者のコミュニケーション能力を高めることも重要な視点であることも認識する必要がある。

重度知的障害児へのコミュニケーション機会を促進する支援

・認知発達段階が下位の場合でも素材の工夫や視覚や触覚などの感覚刺激を提供することや、活動の雰囲気を大切にすることなど、実際の活動では多彩なバリエーションが計画できることを示唆している(田中ほか,2008)

・話ことばや身振りにかなりの制限がある者へのコミュニケーション支援は、その子供の意思表出など伝達に関する支援となるだけでなく、発達全般の支援であるとともに、重度知的障害児が他者と交流して生活の充実や余暇的活動の機会となる。

話ことばによる知的障害児のコミュニケーション支援

①子どものコミュニケーション手段や伝達意図はどのようなものか確認する

・人間のコミュニケーション手段には、発話、声、動作、表情、姿勢などがあり、伝達意図には注意喚起、要求、叙述などがある。
・確認できたコミュニケーション手段や伝達意図がその場面で十分伝わる場合は、実用性の高い手段であることを認識する

②子どものコミュニケーションに応じる指導者の応答に留意する

・子どもの話したいことが不明確でわかりにくいときは、指導者がその不明瞭な発話のように返答してみる
・こうすることで指導者は、知的障害児が自分の発話やコミュニケーション行動が相手に届いていることに気づくよう試みる。

③発話の特徴を理解する

・知的障害児の発話を指導する時、語を切って単語を発話するように練習することを避けた方がいい場合がある。「お・は・よ・う」と一音ごとに区切らず、不明瞭でも「おはよー」と発話するように促すことも検討してみるとよい。

知的障害児への支援を担う指導者の基本的姿勢

①知的障害の理解と地域における共生社会の理念を理解する

・知的障害を含めた障害のある子どもの支援については、知的障害などのある子どもは他の子どもと同等の存在であり、同等の権利があり、地域で共に学び、生活することを通じて育ち合う存在であることを強く意識しなくてはならない。

②コミュニケーションの支援は伝え合うことで育む

・人間のコミュニケーションの発達は、乳幼児期からの伝え合いによって育つ者であるので、知的障害児の支援は、関わる者がコミュニケーションを楽しむように心がけ、伝え合いを通じてコミュニケーション能力を育むように配慮すべきである。

所感

後段は知的障害児へのコミュニケーション指導を担う者への提言であり、心に刻みたい言葉でした。
不明瞭な言葉を不明瞭な言葉で返すことで、受け手として「ちゃんと伝わっているよ」というメッセージを投げかけることになるというのは、なるほどと思いました。
私も指導者だった時分、明瞭な音を作り出そうと、こちらのコミュニケーション手段を押し付けてしまいがちだったなと反省しております。
また、最後の「コミュニケーションを楽しむように心がけ」という部分は、指導的になりすぎることが近視眼的なコミュニケーション陥ることへの戒めだと受け止めました。

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