対人援助に活かすカウンセリング(2020,岩崎)/文献調べ 24-30

対人援助に活かすカウンセリング(2020,岩崎)の中から、「対人援助職のメンタルケア」の章を取り上げて、抜書き&所感を述べます。

目次

<1>燃え尽き症候群に陥らないために

ストレスとは

・カナダの生理学者セリエ(Selye,H.;1907-1982)によって「あらゆる要求に対し、生体が起こす非特異的反応」と定義づけられる。
・ストレス状態は時間とともに変化し、3段階に分類できる

・セリエのストレス学説が、生物学的性格の強いものであったのに対し、その後の研究ではストレスを心理学的観点から捉えることが多くなった
・セリエは、「ストレスは人生のスパイスである」とも言っている
・適度なストレスは、良い刺激となって人間にエネルギーを起こさせる
・心身に悪影響を及ぼすストレスとは、過剰なストレスのことを指す

援助者のストレス

・人を相手にした状況で、業務上適切な感情を演出することが求められる仕事のことを感情労働という
・対人援助職というのは、他の仕事に比べて、精神的に疲れる要因を抱えている
・病気を抱えている人や心が疲れている人を受けとめ、支えていくことが多く、援助者自身もその影響を受け、精神的な負担が増える
・心理学的には、二次受傷といい、共感性疲労、代理受傷、外傷性逆転移などとも呼ばれる
・対人援助職は高度な専門性が期待されていて、日々研鑽を重ねていく必要がある。一方で、利用者の生命や人生に大きく関与するためにミスが許されない職業でもある
・集中力や緊張感が途切れることがほとんどなく、ストレスが高い仕事であることは間違いない
・対人援助職には、専門的知識と援助技法、そして自身の心の安定が求められる

燃え尽きを避けるために

・バーンアウト(燃え尽き症候群)とは、アメリカの精神分析学者フロイデンバーガー(Freudenberger,H.J,)が1980年頃に「自分が最善と確信する方法で打ち込んできた仕事・生き方・対人関係などが、全くの期待外れに終わることによりもたらされる心身疲労あるいは欲求不満の状態」と定義
・対人援助職に多く発生
・シュビン(Shubin,S.)は「非(脱)人格化」と関連する、燃え尽き症候群に陥った看護師の行動の特徴を下記の6つにまとめている
①クライエントと一緒にいる時間をなるべく少なくしようとする
②症状や問題ばかりに注目してクライエント自身に目を向けなくなる
③教科書的な原則にこだわり融通や応用が利かなくなる
④クライエント自身や、その家族、その症状に関して冗談を言ったり茶化したりする
⑤クライエントを番号や診断名や専門用語で呼んだりする
⑥クライエントに対して過度に距離をおいて分析的に接する
これらの行動は、他の対人援助職にも共通する特徴であると言われている

<2>ストレス対処法を身につける

・自分がどのくらいのストレスを抱え
・自分がどれだけストレスに強い(弱い)かというストレス耐性の度合いを知ることが重要

ストレスに気づく、そして自分のストレス耐性を知る

・自分のストレス耐性をある程度知っておくことは、適切な対応をしていく上で重要なポイント
・最も重要なものの1つが睡眠。

ストレスへの対処(コーピング)について

・ラザラスとフォルクマンは、心理的ストレスを「人間と環境との関係である。つまり、人的資源に負担を負わせたり個人の資源を越えたり、また個人の安寧を危険にさらしたりするものとして、個人が評価する人間と環境の関係から生じるものである。特定の人間と環境の関係がストレスフルなものかどうかの判断は認知的評価に依存している」としている。

・「認知的評価」のありさまが分かれ道になる。
・ラザルスらは、ストレス・コーピングを大きく2つ「問題焦点型」「情動焦点型」に分類。

効果的なストレス対処法

・日常生活の中で実施できる代表例として
           休息を取る
           積極的に問題を解決する
           ものの見方を変える
           趣味、娯楽を楽しむ
           気分転換を図る
           リラクゼーションを行う
           軽い運動をする
           誰か(信頼できる人)に話す
           ソーシャルサポートを活用する
           スーパービジョンを受ける

ソーシャルサポートを活用する

・ソーシャルサポートとは、種々の問題を抱えている個人に対して、周囲から与えられる支援のこと
・手段的サポートと情緒的サポートに区別。

・多くの研究者が、人間関係の豊かな人、人的ネットワークに充実している人は、周囲の人間関係から孤立している人よりもストレスに強いことを指摘

<3>スーパービジョン

・スーパービジョンとは、対人援助専門職が、常に専門家としての資質向上を目指すための教育訓練法のこと
・定義は、たとえば「スーパーバイザーにより、スーパーバイジーに対する管理的・教育的・支持的機能を遂行していく過程のこと」
・端的にいくと、「スーパーバイジーの能力を最大限に生かして、よりよい実践ができるように援助する過程」

スーパービジョンの機能

管理的機能:所属する組織・機関の期待する役割を適切に遂行していくことができるようにすることを目的
教育的機能:専門知識や技術を高めていくことが目的
支持的機能:心理的サポートを目的とするもの

コンサルテーションとの違い

・コンサルテーションも、相談やアドバイスを受けることではスーパービジョンとよく似ている
・スーパービジョンではスーパーバイジーと同じ専門性をもつ経験豊かな専門家が後輩や同僚を対象として援助技術等のあり方をめぐっての学習や指導という機能を果たす
・コンサルテーションは教育や管理機能を有していないという点で、スーパービジョンとは区別。また、支援活動の展開に直接参加することなく、あくまでも専門性の異なる専門家としての意見が求められることになる。

所感

対人援助職の定義には「専門性の高さ」が含まれると思いますが、障がい者雇用の現場で障害者のサポートと行う人は、現場で日々専門性を磨きながら苦悩したり工夫したりして、日々奮闘されています。日々の奮闘に「専門性の向上」が追いつかず、バーンアウトに近い状態を呈す方もいらっしゃるでしょう。役割的には対人援助職と同じでありながらも「看護師」「心理士」「介護士」などの名称がないだけで、メンタルケアなど必要な支援が受けられていいないケースが多いと感じます。
ある企業さんでは「生きがい、働きがいという言葉は、障がい者だけに当てはめるものではない」と、部署全体で「生きがい・働きがい」を高めようとさています。とても素晴らしいし、障害者雇用に力点を置かれようとしている多くの企業さんにとって、必要な視点だと感じました。

私も対人援助職の端くれとして、非常に気づきの多い書籍でした。ありがとうございました。

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