向社会的行動の効果についての考察②/文献調べ25−21

前回の続きで、本邦における向社会的行動の効果に関する研究の動向-マイクロ・メゾ・マクロの三視点から-(山元琢俟・上淵寿,2021)を抜書きしつつ、向社会的行動について整理した上で、障害者雇用の現場においての効果について推察してみたいと思います。

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・マイクロ・メゾ・マクロの3つの関係性のレベルで向社会的行動を分類することが提唱されています。(Penner et al., 2005)

・マイクロレベル_個人における向社会的な傾向の起源やその傾向の差の観点から向社会的行動を捉える視点
・メゾレベル_特定の状況における行動実行者と受け手の二者関係から向社会的行動を捉える視点
・マクロレベル_集団や大きな組織の中で行われたものとして向社会的行動を捉える視点

以下、書く分類における結果と考察の概略です。

マイクロレベル
向社会的行動の実行者においては、主観的幸福感やポジティブな認知・感情の促進という結果につながることが示唆されました。
一方で、過剰適応傾向の高い個人においてはむしろ低い精神的健康度を示すも少数ながら確認されました。
※過剰適応とは「ない的な欲求を無理に抑圧してでも、外的な期待や要求に応える努力を行うこと」(石津・安保,2008)

メゾレベル
向社会的行動を受けることで行動実行者に対する魅力度や好意度を高く認知したり、肯定的な印象を抱くことが確認されました。つまり、受け手から行動実行者へのポジティブな評価が喚起されることが示唆されたことになります。
ただし、向社会的行動をしさえすれば対人関係におけるポジティブな結果が得られるわけではない。ということには注意が必要です。

マクロレベル
向社会的行動の実行に対する第三者からの評価はおおむねポジティブ。ということが確認されました

まとめ
・3つのレベルにおいて、向社会的行動の効果はおおむねポジティブであると確認。
・一方で、失敗場面などの特定の状況下や不適切な向社会的行動はネガティブな効果をもつことも確認。
・向社会的行動の質的な違いについて、さまざまな視点からの検討が必要

障害者雇用現場における向社会的行動の意義

障害のある人と働くことで、周囲の人たちの精神的健康度が向上するという報告があります。例えば、清掃業務や事務サポートなどの縁の下の力持ち的な業務においても、利他的な行動だと映る人も多く、自然と周囲をポジティブな気持ちにさせていると思われます。

また、周囲の人たちのナチュラルサポートについても、行動実行者が「いいことできた」という気持ちになることが、本人・第三者に対するポジティブな効果があるということだとも思います。

向社会的行動について理解することで、障害者雇用の意義も高まるなと感じているところです。

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