合理的配慮において重視される「対話」についての理解/25-08

合理的配慮の提供について、障害のある人と事業者との「建設的な対話」が求められているのは周知の事実ですが、この「対話」というものがどんなものなのかというのを、はっきりとした輪郭をもって説明することに難しさを感じています。
今回は、小坂貴志さんの「現代対話学入門」(2017,明石書店)を参考に「対話」についての理解の深化を試みます。

目次

辞書的意味

辞書的意味として、
・向かい合って話すこと。相対して話すこと。
・「対」の意味
があります。

似ている概念として「会話」がありますが、会話と対話の対比として

対話が用いられる際には、対話の話題そのものが通常は深刻であり、何か解決されるべき問題や課題を対話に参加しようとする当事者同士が抱えていて、問題解決のために対話という手段が選ばれる。

としています。

何気ない「会話」という表現はあっても、何気ない「対話」という言い回しはありません。そのことから、「対話」が何かしらの問題解決の手段として用いられることを表しています。

相対主義と対話

興味深い考察として「相対主義と対話」という節がありました。

多様性を認めることを推進するには、多様性を認めさせない考え方そのものを否定することはできず、自らが推進しようとする考え方そのものに攻撃を受ける。
だからこそ、対話論(多声性)には「矛盾」という概念がつきまとう。

これは、最近聞いた言葉で「異質性を求める同質性」と近い考え方だと思います。異質性を求める人たちが同質化するという現象をうまくいい表しています。

こういった矛盾をはらんでいることを、恐れないこと、とも述べられています。

多様性を確保する

多様性を確保するための「対話」に必要なこととして

互いの対話を阻む要因に関して、口を噤む努力を払わなければならない。

としています。

「建設的な対話」と表現されているのも「口を噤む」という努力が必要であるという意味を包含しているからだと思います。

「口を噤む」に類する形で思想家や教育学者の考え方を引用しており

ボームの対話手法…自らの前提を乗り越えるために、それを阻害する何かを保留状態にする必要性が説かれている
フレイレ…これまで搾取してきた側に自己規制を強いることを提言
Kingwell(1995)…互いの感情を傷つける発言をしてはならないと諭している

と述べられています。

所感

「対話」は言葉の重厚な重なりあいというイメージもありますが、「自己規制」や「保留状態」が用いられていることから、傾聴や肯定的な関心といった受け止め(特にマジョリティ側)が求められるということでしょう。

先日、某国のトップ同士の会談が紛糾・決裂したことが大きなニュースになっていましたが、少なからずあの場での「保留」や「自己規制」「感情を傷つける発言をしてはならない」という「対話」に求められる態度が双方に取られている状態ではなかったんだろうなと感じました。

「対話」の場の設定と並び、そこにいる人たちの「傾聴スキル」も必要になると考えます。

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