ダイバーシティ経営/文献調べ24-42
「ダイバーシティ経営と人材活用」(佐藤、武石,2017)から気になった部分を抜き書きし、所感を述べます。
○誤解の多いダイバーシティ経営
・第1の誤解は、ダイバーシティ経営を結果としての多様な人材の活用だとすること
・そうではなく、これまでとは異質な人材であっても受け入れ、それぞれが活躍できる組織とすることがダイバーシティ経営
・これまで「適材」としてきた人部図増を変革することが必要
・第2の誤解は、多様な人材活用を重視するとしながら「女性」や「外国人」などを画一的に捉えていること
・第3の誤解は、多様な人材を受け入れることが自動的に企業業績に貢献すると安易に考えるもの
・多様な人々が活躍できる組織を構築することで、企業としてはその果実を得ることができる可能性が高くなるものの、それはあくまでも可能性である
・その可能性を経営成果に結実できるかどうかは、企業のマネジメントによる
・多様な人材や異質な価値観を持つ人材が活躍できる組織を構築し、それを経営戦略の実現に結びつけることができて、はじめてダイバーシティ経営は企業の業績に貢献できる
○ダイバーシティ経営を導入・定着するために必要なこと
・第1に、組織風土を改革すること
・お互いの違いを認めて、理解するための努力が必要となる
・第2に、同質的な人材像を前提としてきた働き方と人事管理システムの改革
・第3に、管理職自身がそれぞれの職場で、ダイバーシティ経営の定着を担うことが重要となり、そのためにワークライフバランス管理職の育成が鍵となる
○ダイバーシティ経営に適合的な人事管理システム
・個別管理、多様で柔軟な働き方、自己選択型キャリア管理
・ジョブ型雇用や限定的雇用の特徴と重なる部分が多い
○仕事とがん治療の両立
・ワークライフバランスにおける新たな課題として、働く人本人の病気治療と仕事との両立課題が挙げられる
・アメリカの先行研究_疾病中の雇用継続や復職の要因として「雇用主の理解」「労働時間などの柔軟性」「カウンセリング」「リハビリ」「若年層」「高学歴」などがあげられている(Mehnert,2010)
・治療中の就業継続に影響を与える変数として「労働の柔軟性」「同僚に治療などに関して話していること」「疲労解消の困難さ」「すべての治療予約に出席できるように有給をとれること」が挙げられている(Pryce et al., 2006)
○がん罹患者の就業継続の要因分析
・職場に「WLBに配慮する雰囲気」があることと「病気について相談できる雰囲気があること」がともにプラスに有意。こうした職場環境があることが、離職を防ぐ可能性がある
・一方、「平均労働時間」の長さは、マイナスに有意であり、罹患前の労働時間が長いと、離職を決断しやすくなる可能せがある
・罹患当初は「職場の雰囲気」が重要だが、実際に、罹患から1年以上経ち、治療をしながら働き、治療の終了後の再発不安等を抱えながら働き続ける上では、実際の仕事の配分や上司の理解や支援が重要とみられる
まとめ
・分析結果から、診断のショックを受けての当初の離職を防ぐためには、これまで仕事と子育てあるいは介護の両立などの目的で整備されてきた「WLBに配慮する雰囲気」や個人的な問題を話し合える雰囲気づくりが重要であることがわかった。
○所感
障害者雇用をダイバーシティ経営のスコープに含める企業が多い中で、各施策での取り組みが有機的に結びついてダイバーシティ経営全体に効果を発揮しているように思えました。特に、病気との両立は、中途障害者の課題とまさに同じであり、「話しやすい雰囲気」が大事であることが明らかとなったのは、合理的配慮における「対話」による関係づくりの重要性も示唆しているように感じます。
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