ダイバーシティ・マネジメントの研究/文献調べ24-36

以前も同著を取り上げさせていただきましたが、今回も「ダイバーシティ・マネジメントの研究」著:有村貞則(文眞堂、2007年)の一部を 抜書きしつつ、所感を述べていきます。

目次

ダイバーシティ・マネジメントのひろがり

・ダイバーシティ・マネジメントが誕生する前の多様性の管理方法として、同化アプローチ、法的アプローチ、多様性の尊重アプローチ(Carr-Ruffino,1996)
・1990年代以降、労働力および人口構成の激変。ダイバーシティ・マネジメントのひろがり
・米国国勢調査結果で・・・白人男性中心のマネジメント体制が限界に近づいていることを示し・・・アメリカ企業は、まさに組織の存続をかけて必死にダイバーシティ・マネジメントを推進するようになった(古沢,1994)
・もう一つは、法的アプローチの限界。1980年代以降、多様性の尊重アプローチを採用する企業も増え始めたが依然、支配的であったのは法的アプローチ、なかでもアファーマティブ・アクションである。
・アファーマティブ・アクションに取り組んでも、多数の女性やマイノリティが参入レベルの職位に止まっているという現実を変えることはできなかった。
・性的バイアス(先入観、偏見)を原因とする「潜在的損失(hidden costs)」の試算は年間1530万ドルにも達した(American Humanagement Association調べ)

ダイバーシティマネジメントの特徴

・ダイバーシティ・マネジメントとは「人々の間の様々な違い、すなわち多様性を競争優位に結び付けるための長期的な組織改革のプロセス」
・第1に、目的はあくまで競争優位のためである。
・Cox and Blake(1991)も6つの領域においてダイバーシティ・マネジメントによる競争優位が可能であると指摘↓

・第2に、多様性を幅広く捉える。
・ダイバーシティマネジメントでは、雇用差別禁止項目(人種、宗教、肌の色、出身国、年齢、障害など)以外にも多様性が存在することを認める。例えば、性的嗜好、配偶者関係、価値観、個性、学歴、出身地域、経済的地位、終身在職権の有無、管理職と非管理職の違い、合併・買収先の社員、仕事に対する考え方や進め方の違いなどが多様性の構成要素となることもある(Thomas, R., 1991,Thomas,D.andEly,1996;Winterle,1992)
・第3に・・・ダイバーシティ・マネジメントは個人・対人関係・組織の3つのレベルで同時並行的に問題解決に取り組む。と同時に最も重視するのは組織レベルの問題解決、すなわち既存の組織構造や管理制度・手法、仕事の進め方などの見直しとそれを通した組織文化全体の変革である(Thomas,R.,1991;Carr-Ruffino,1996;Miller,1998)
・ダイバーシティ・マネジメントは、個人と組織がともに変化するという双方向の適応プロセスを促す(Thomas,R.,1991;Carr-Ruffino,1996)
・第4に、プログラムではなくプロセス。実際の取り組みの家庭で新たな問題点や解決策が発見されるという「進化的性質(evolutionary nature)」を持っている(Thomas,R.,1991)
・長期的な視点が必要になるし、なによりも各組織の主体性と創意工夫が問われる。

ダイバーシティ・トレーニング

・多数のアメリカ企業がダイバーシティ・マネジメントのもと最初に取り組む活動のひとつがトレーニング
・多様性を活かす職場環境作りの最初の重要ステップのひとつはトレーニングであると指摘する声は多い(Cox,1993;Winterle,1992;Wheeler,1994)
・トレーニングの内容

所感

有村先生といえば「ダイバーシティ・マネジメントと障害者雇用は整合的か否か」が個人的には非常に勉強になりました。以前、拙ブログでも取り上げましたが、次回以降改めて読み直したいと思っています。

20年も前からダイバーシティ・マネジメントの研究をされていたことに驚きですが、10年ほど前からは「障害者雇用」を絡めたテーマがあることが目を惹きます。

企業の担当者さんと仕事をさせてもらうと、障害者雇用の推進には、その必要性、つまりは誤解を恐れず平たくいうと「メリット」「うま味」を伝えないことには、「総論賛成・各論反対」から脱せられないという話を伺います。これは「障害者雇用」に限らず、ダイバーシティ・マネジメントにおいても同じだなと感じますが、本著では人口動態(白人男性比率の減少という未来)に対する危機感から、企業がダイバーシティ・マネジメントを本気で考え始めたとありました。日本の労働人口減少もこれに類するものだと思いますし、法的アプローチとして雇用率があるため、企業にとっては障害者雇用を含めたダイバーシティ・マネジメントへの対応は待ったなしの課題であることを本著を通しても気付かされました。

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