【コラム】事例性と疾病性
各社のマネージャー層の方々から、障害者雇用現場のお話を伺うと、マネージャーさん達のお話の上手さに引き込まれることがあります。
「上手さ」の正体は「状況の整理」にあります。マネージャーさんたちは、自分たちの「主観的事実」と周囲の声や数値(例えば勤務日数など)による「客観的事実」による切り分けや、「障害特性」なのか「現場で困っていること」なのかという切り分けなど、状況を立体的に捉えていらっしゃるという印象です。
こう聞くと、産業保健職の方々が体調不良を抱えた従業員の相談内容を「疾病性(しっぺいせい)」と「事例性」とに分けて問題を整理するということを思い起こします。
「疾病性」は症状や病名に関することで、「事例性」は仕事を行う上で困っていることです。
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例えば
・人の思いや考えを想像するのが苦手
・夜、眠れない
といった症状や診断名に関連するものは、医療職が判断するもので、「疾病性(しっぺいせい)」です。
一方、
・同僚とコミュニケーションが上手くとれず、孤立している
・仕事への集中力が低下し、期日を守れない
などは、職場で本人や周囲の人たちが現実に困っていることで、「事例性」です。
夜眠れず、集中力が低下して仕事をやりくりできなくなった人に対し、職場で対応できるのは「仕事をやりくりできなくなった」という部分です。「夜眠れない」部分は必要に応じて産業保健スタッフにつなぎます。
職場で起こっている本人(もしくは周囲の人たち)の困りごとに支援(配慮)をすることで、「事例性」は解決できる可能性があります。
つまり「疾病性はあるが、事例性はない」という状況があり得るということです。
マネージャーが障害のある従業員から相談を受けた際に、相談内容を「疾病性」と「事例性」に分け、「事例性」にどう対応すればいいかを一緒に考えられるといいかなと思います。
もちろん、「事例性」が1つに集約されるものではなく「仕事が手につかない」「勤怠が安定しない」など複数の要素が挙げられることもあります。これには労働契約などと照らし合わせながら問題の優先順位づけをしていき、緊急度や重要度の高いものから手をつけていくというのもやり方としてあります。
さてここまで書くと、障害の社会モデルも似た概念だと気付かされます。
「○○障害だから仕方ないよね」ではなく、その人が現にいま、この環境下において困っていることを整理して、一緒に考えることが、職場にある障壁・バリアを取り除くことだと思います。
※参考「疾病性と事例性に分けて合理的配慮の適切な提供を考える」
どの現場でも、みなさんご苦労されながらさまざまな経験・知見を積み重ねられているなと、刺激を頂いているところです。
弊社も、障害者雇用現場のお困りごと解決に引き続きお役に立ちたいと考えております。
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